山形県の地域ブランド商標である刈屋梨(かりやなし)は、平成19年(2007)1月12日、庄内みどり農業協同組合によって地域団体商標に登録されました。
山形県酒田市の刈谷地区産の刈谷梨は、品種でいうと、幸水、豊水、新水など、国内でよく栽培される品種で特別珍しいものではありません。
にもかかわらず、刈谷産の梨は特別なブランド力を持っています。
なぜ、なんの変哲もない品種なのに、刈谷産だけが特別扱いされるまでになったのでしょうか。
山形県の地域ブランド商標、刈屋梨とは
幻とまで言われた梨
山形県の刈谷梨といえば「幸水」が有名です。
収穫期は、まだ夏の暑さが残る8月下旬から10月ごろ。果物県・山形に実りの秋を告げる一番乗りが刈谷梨なのです。
その特徴は、芳醇な香り、しっかりした甘味、サックリとした歯触り、たっぷりの水気だと言われています。
幸水ならどの産地でもだいたい同じような味ではないのでしょうか。
それが違うのです。
確かに品種は同じです。
しかし、山形県の刈谷産の梨だけは、「ものが違う」と地元で評判。
あまりの人気から地元でもなかなか手に入らず、“幻”と言われていたほどです。
果樹栽培に適した肥沃な土壌
ではいったい、山形県産の梨と、ほかの産地の梨では何が違うのでしょうか。
第一に挙げられるのは、肥沃な土地です。
刈屋梨の産地である庄内平野は、東北有数の秀峰であるの鳥海山に降り積もった雪が解けて流れ、たっぷりとミネラルを吸収しながら下流へと肥沃な土を運びます。
栄養豊富な土壌は、「肥沃すぎる土壌のせいで木に成ったまま果実が腐ってしまう」と言われるほど。
梨に限らず、山形県が全国有数の果物産地なのは、果実栽培に適した土壌の恩恵を抜きには語れません。
果樹農家の栽培努力
山形県の刈谷梨のブランド力を育てたのは、土地の恩恵だけではありません。
もう一つ、代々の農家の努力があります。
たとえば、刈谷地区では、花粉の受粉作業を、現在でも一つひとつ手作業でやっています。
言うまでもなく、メシベにオシベの花粉を受粉させることによって実がなるわけですが、ただ単に受粉させればいいわけではありません。
刈谷では、受粉させる花と、させない花をよりわけています。
全部の花に実が成ってしまうと、養分が分散されてしまうからですが、それだけでなく、日当たりがよく、養分をより吸収しやすい場所にある花を一つひとつ選んで受粉させます。
当然、受粉作業のあとは、そのほかの花が自然受粉してしまわないよう、保護膜をかぶせる作業も加わります。
このこだわりと、徹底した品質管理によって、刈谷梨のブランドは守られているわけです。
山形県の地域ブランド商標、刈屋梨の歴史
山梨県の酒田市で梨の栽培が始まったのは明治初期と言われます。
酒田市を流れる日向川と荒瀬川の合流地に最初の梨畑が作られました。
このとき栽培されていたのは長十郎という品種です。
かつては和梨の代表品種でしたが、実がやや硬い点や、収量を上げるために糖度が下がったことなどから、やがて、幸水や豊水へと人気が移ったため、刈谷でも品種を切り替えた、ということです。
山形県の刈屋梨の商標登録状況
登録日 | 平成19年(2007)1月12日 |
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出願日 | 平成18年(2006)4月18日 |
先願権発生日 | 平成18年(2006)4月18日 |
存続期間満了日 | 平成29年(2017)1月12日 |
商標 | 刈屋梨 |
称呼 | カリヤナシ |
権利者 | 庄内みどり農業協同組合 |
区分数 | 1 |
第31分類 | 山形県酒田市刈屋産の梨【類似群コード】32E01 |