山形県酒田市の地域ブランド商標である平田赤ねぎ(ひらたあかねぎ)は、庄内みどり農業協同組合によって地域団体商標に登録されました。
山形県の平田赤ねぎは、その名の通り、真っ赤なねぎです。
ごく最近まで、市場に出荷されず、農家の自家使用のため細々と栽培されてきた知る人ぞ知る野菜でした。
個性的なねぎを地元の特産品にしようと奮闘した生産者の努力が実り、一般の長ネギの3倍の値段で取引されるブランド力を獲得しました。
山形県の地域ブランド商標、平田赤ねぎとは
ワインレッド色のねぎ
平田赤ねぎは山形県酒田市の平田地区(旧平田町)で生産されたねぎです。
特徴は、なんといっても見た目のインパクト。
赤いのです。
それも、何となく赤っぽいのではなく、目の覚めるような鮮やかなワインレッドです。
通常長ネギは埋まっている部分は白ですが、赤ねぎはその土に埋まっている部分がすべて真っ赤。
さらに、曲がりや枝分かれのない一本ねぎです。
日本海西側航路の中継地として山形県酒田市が栄えていた江戸時代末期、上方商人から譲り受けた在来野菜を、地元の農家が代々受け継いできたものです。
見た目のインパクトだけではなく、味も非常によく、生のまま食すとキリッとした辛みが効いており、麺類の薬味やサラダのアクセントになります。
火を通すと辛みが消えて、逆に、まったりとした甘みが出て、鍋物の具材としても最適です。
成分検査の結果、ポリフェノール、ケルセチン、アントシアニンなどの栄養分に富み、ビタミンCの含有量も通常の長ネギよりも豊富です。
ブランド化されたのはつい最近
いまでは地域ブランドとして認知されるようになった山形県の平田赤ねぎですが、つい最近まで本格的な栽培はなされていませんでした。
種まきから収穫まで1年以上かかるうえ、赤色を発色させるためには、土を盛る作業をしなければならないなど、非常に手間がかかるため、農家としても経営的にみあいません。
それに、品種改良される前は現在のように鮮やかな赤ではなく、くすんだ色で、曲がって枝分かれもしていました。
味はよいが、売れる野菜になるとは思えなかったのです。
現在、市場に出荷できるようになったのは、個性的な見た目に目をつけ、地域の特産品に育てようと生産者、県、町、農協が一体になって栽培方法の確立とブランドに取り組んだ努力の結果です。
山形県の地域ブランド商標、平田赤ねぎの歴史
2000年、特産化に向けたプロジェクトが動きだす
平田赤ねぎは、江戸時代の終わりごろから山形県酒田市で生産されていましたが、地元農家が自家用に栽培しており、決して市場に出回ることはありませんでした。
平田赤ねぎが世に出るきっかけになったのは、2000年に平田町に新たに農産物の直売所が開設されたことに端を発します。
山形県の庄内地方は、最上川がもたらす豊富な水量とミネラルをたっぷり含んだ豊かな土壌、適度な雨量などの好条件に恵まれた地域で、農産物の生産が盛んなため、産直施設の激戦区でした。
新しい直売所では、他の直売所と差別化になるような特色のある野菜を探していたところ、地元の平田で栽培されていた赤ねぎの存在に行きついたのです。
直売所を運営する産直推進協議会が働きかけ、県、町、農協、生産者を集めて赤ねぎを特産品にできないかという話し合いがもたれ、その結果、平田赤ねぎの商品化に向けたプロジェクトが動きだしました。
越えなければならないハードルは山積
有志が集まり、まずは栽培してみようということになったものの、栽培方法の短縮、赤色を出す方法の研究、栽培面積の拡大など、越えなければならないハードルはたくさんありました。
中でも懸案だったのが栽培期間です。
伝統的な栽培法では、9月ごろに種まきした赤ねぎが出荷できるまでに育つのは、翌年の11月ごろ。つまり、栽培に14か月間もかかるのです。
せめて1年以内に短縮できなければ、農家の経営として成り立ちません。
そこで、生産者と山形県庄内酒田農業技術普及課が協力して栽培期間の短縮に取り組み、茨城県で実践されていた苗のハウス栽培法を取り入れるなどして、9ヶ月まで栽培期間を短縮することができました。
しかし、実際に栽培を始めた初年度の結果は、栽培期間こそ短くなったものの、ほとんどのねぎが十分な太さに育たたなかったり、赤の発色が悪かったりして、何とか売り物になったのは収穫量全体の1割。収量そのものが少ないため、収益はほとんどあがりませんでした。
それでも、優良品種を選別し、栽培方法を工夫するなどした結果、2年目、3年目と徐々に生産量、品質もとに向上。
新たな生産者の参加もあったため、2003年、平田赤ねぎの特産化に向け、本格的に栽培法の確立と販路の開拓などを進めていくため、「平田赤ねぎ生産組合」発足。以降、急ピッチで平田赤ねぎのブランド化が進められていきます。
厳しい自主基準によって品質を徹底管理
平田赤ねぎ生産組合では、栽培方法の確立や品種改良を進める一方で、太さ、形状、傷などについて厳しい自主基準を設け、品質を管理することによってブランド価値を高めるための努力をしています。
赤ねぎは通常の長ネギに比べて外皮が柔らかいため、傷が付かないよう細心の注意が必要です。
収穫の際にも機械ではなく手作業で泥を落とし、薄皮は風圧によってはがし、仕上げに一本一本タオルで磨き上げるなど、実に丁寧に扱われます。
また、赤ねぎは斜めに定植されていたため、湾曲しているものでしたが、それでは市場で扱えないということで、まっすぐに育てるため生産者が共同で畝を高く盛り上げる専用の耕作機械を導入しています。
こうした努力の甲斐があって、平田赤ねぎは市場関係者の高い評価を受け、通常の長ネギの 3倍近い高値で取引されるブランド食材になったのです。
参考:
JA庄内みどり
山形県庁
JA庄内みどり酒田園芸センター
酒田市役所
平田赤ねぎの商標登録情報
登録日 | 平成19年(2007)1月12日 |
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出願日 | 平成18年(2006)4月18日 |
先願権発生日 | 平成18年(2006)4月18日 |
存続期間満了日 | 平成29年(2017)1月12日 |
商標 | 平田赤ねぎ |
称呼 | ヒラタアカネギ,ヒラタネギ |
権利者 | 庄内みどり農業協同組合 |
区分数 | 1 |
第31分類 | 山形県酒田市平田地区(旧平田町)産の赤ねぎ【類似群コード】32D01 |