江戸木版画とは、主に東京都に由来する伝統的な製法により制作された木版画のことです。
主な生産地は東京都荒川区、足立区、台東区、文京区などのほか、西東京市や千葉県松戸市、茨城県常総市などでも生産されています。
東京都以外の地域にも波及していますが、主に江戸(東京)で伝統的な技術が確立したこと、現在でも主たる産地が東京都内であることから、東京都の地域ブランド商標として認識されています。
また現在、江戸木版画の商標は、東京伝統木版画工芸協同組合によって地域団体商標として登録されています。
東京都の江戸木版画とは
特徴
世界的にも知られる葛飾北斎の「富嶽36景」など、数々の名作版画を生み出したのが「江戸木版画」です。
芸術というより、どちらかというと大衆娯楽作品というのにふさわしいものかもしれません。
版画、つまり、印刷形式によって同じ絵が何百枚も刷られるようになったことで、価格も比較的手ごろになり、庶民の間にも広がりました。
現在でいうところのポスターやポートレートといった扱いに近いと言っていいでしょう。
江戸木版画は大衆が好むものへと発展し、その時々の流行の題材が取り入れられていった結果、庶民の生活文化を反映した自由闊達な表現に進化したのです。
作り方
江戸木版画の作り方の特徴は、原画を描く絵師、木版を作る彫師、木版画を刷り上げる摺師の共同作業によって作られるところにあります。
それぞれの工程はざっと次の通りです。
1.原画
絵師は、好きなものを自由に書けばいいというわけにはいきません。
そもそも木版画は、いまでいう商業イラストや漫画のようなものです。
版元が、世の中の流行やお客さんの好みなどから、売れそうなテーマを絞り込み、どんな題材、構図の絵にするか、絵師に指示をします。
書き方も、版画にすることを想定し、墨で輪郭を黒くしっかり描き、その中に色を塗っていきます。
このとき使う色は、版画で使える色と同じものを使います。
2.彫り(版木づくり)
桜の無垢板を使った版木を彫り上げていくわけですが、この際、色ごとに版を変えます。
まず、大事なのは主線になる墨版。
絵師の描いた原画を張り付け、輪郭を浮き彫りにするよう周囲を彫り上げます。
次に、一色ごとに版木を彫ります。その色が使われる部分だけを残し、余分なところを取り除くわけです。
ここで大事な作業が、「目当」です。
色を塗るときに、位置がズレないよう、固定するための目印です。
すべての版木に寸分たがわぬポイントで目当を彫らなければなりません。
3.摺り
版木に塗料を塗り、紙に色を摺り込んでいきます。
色を塗り重ねる際に、ズレてしまわないよう、目当をしっかり合わせたら、紙を乗せ、馬連(ばれん)を使って色を摺り込みます。
江戸木版画は通常20回前後の色摺りによって完成します。
絵師、彫師、摺師というそれぞれのスペシャリストの高い技術の混合によってはじめて完成する木版画は、平成5年12月17日、経済産業省より国の伝統的工芸品にも指定されています。
東京都の江戸木版画の歴史
木版画の歴史は、いまからおよそ1200年前にさかのぼることができます。
木の板に模様を彫り、溝に染料を流し込んで衣服の文様を彩色した「蛮絵」が正倉院に所蔵されていることから、木版画の技法そのものは、かなり昔から確立していたものと推測されます。
木版画が一般に普及しはじめたのは、江戸時代に入ってからのこと。
当時すでに、浮世絵師が活躍していたが、一点ものの肉筆画では高価すぎるし、流通量も少ない。
そこで、版画にして大量生産することで商売として成り立つようになり、絵師をプロデュースする版元が中心になって、絵師、彫師、摺師の連携によって新たな作品を作り続けるというビジネスモデルが確立するわけです。
誕生したころの江戸木版画は黒一色で、輪郭だけを版画で摺り、彩色は人間の手でやっていました。
丹絵、紅絵、漆絵などと呼ばれます。
色塗りは絵師本人だけではなく、弟子たちを使って分担してで行うことで、生産量は増えましたが、それでも基本的には手書きです。
これが、2~3色、重ね塗りできる技法の開発によって、「紅摺絵」が誕生。
さらに、明和2年(1765 年)になると、10色以上の顔料を使って複雑な色彩表現を可能とする錦絵のスタイルが確立。
現在の江戸木版画の基礎が完成しました。
その後、歌麿、写楽、北斎、広重など多くの才能を生み出し、木版画は一大産業として発展。現在に至るというわけです。
参考:
東京伝統木版画工芸協同組合
伝統工芸青山スクエア(伝統的工芸品産業振興協会)
東京都伝統工芸士会
JTCO日本伝統文化振興機構
東京の伝統工芸品(東京都産業労働局商工部)
浮世絵工房(一般社団法人萌生堂)
NPO法人 メイド・イン・ジャパン・プロジェクト
江戸木版画の商標登録情報
登録日 | 平成19年(2007)2月23日 |
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出願日 | 平成18年(2006)4月1日 |
先願権発生日 | 平成18年(2006)4月1日 |
存続期間満了日 | 平成29年(2017)2月23日 |
商標 | 江戸木版画 |
称呼 | エドモクハンガ |
権利者 | 東京伝統木版画工芸協同組合 |
区分数 | 1 |
第16分類 | 東京に由来する製法により東京都荒川区・新宿区・足立区・台東区・中央区・文京区・目黒区・練馬区・西東京市・千葉県松戸市及び茨城県常総市において生産された木版画【類似群コード】26B01 |