静岡県の地域ブランド商標である焼津鰹節(やいづかつおぶし)は、焼津鰹節水産加工業協同組合によって地域団体商標に登録されました。
鰹節といえば、本場は四国の土佐、それに続く九州の薩摩、静岡県の中では伊豆が老舗です。
焼津はどちらかといえば後発でした。
ところが、明治のころには西の土佐に並び称されるほど高いブランドを確立するまでになっています。
静岡県では焼津鰹節のブランドをどのように確立していったのでしょうか。
静岡県の地域ブランド焼津鰹節とは
静岡県の焼津鰹節の商標を名乗るためには厳しい条件があります。
原料である鰹が獲れた地域が明確で、伝統的な製法に乗っ取って生産されたもので、かつ、焼津鰹節水産加工業協同組合が求めるブランド認定基準を満たした製品のみが、焼津鰹節の商標を商品に付すことができます。
焼津鰹節水産加工業協同組合によると、焼津鰹節のブランド認定基準は以下の通りです。
- 製品の官能検査において色調・味・香りが良好なもの
- 生産履歴が明確であり原料から製品まで一貫した衛生管理・品質管理に基づいて製造されたもの
このほか、製造工程においても以下のような指針を守る必要があります。
- 解凍水および加工用水の排水は環境に配慮した排水処理施設を設置
- かつおの残渣(ざんさ=捨てる部分)は飼料・肥料の他、機能性食品等としてすべて高度資源活用
- かつおの煮汁は調味料に利用
- 焙乾にはコナラ・クヌギなど堅木の薪により、焙乾とあん蒸(※1)を繰り返し乾燥させ、日数をかけじっくり作り上げる
- 鰹節のカビは日本鰹節協会の優良純粋カビを使用し、カビ付け・天日干しを繰り返し製造
※1
焙乾(ばいかん)・・・乾燥室に火をくべて魚肉から水分を抜く工程。
あん蒸(あんじょう)・・・焙乾によって抜けきらなかった水分が表面に浮いてくるのを待つため乾燥室の火を止めて休ませること。
焙乾とあん蒸を何度も繰り返すことで、完全に水分を抜いていく。
このような厳しいブランド基準の設定、管理によって静岡県の焼津鰹節が高い評価を獲得しているわけです。
静岡県の焼津鰹節の歴史
干して水分を抜き固めた魚を「堅魚」といい、日本最古の歴史書である古事記にも記載されるほど古い時代から存在していたようです。
ただし、「堅魚」と現在の鰹節は製法も形も大きく違うものだったようです。
現在の形の鰹節が誕生したのは、江戸時代の延宝2 (1704) 年、紀州に住む甚太郎という人物が燻製の手法を応用し、魚肉の水分を除去する「燻蒸法(現在の焙乾法と思われる)」を確立したのが最初と言われます。
甚太郎が作った鰹節は「熊野節(くまのぶし)」と呼ばれ、大変なヒット商品になりました。
この人気に目を付けたのが土佐藩です。鰹の産地として当時から有名でしたが、冷凍保存の技術がない当時、せっかくの名産品を全国に販売する方法がありませんでした。
乾燥して保存できる鰹節なら特産品になります。
そこで、土佐藩では藩を挙げて鰹節の生産方法を確立したということです。
土佐で確立された鰹節は、狙い通り、特産品として全国へと広まりました。
保存に適した鰹節は、重要な兵糧の物資となり、加えて、鰹節は「かつお(勝男)ぶし(武士)」に通じることから、武家の祝事事に欠かせないものになったのです。
やがて、土佐の製法が薩摩、伊豆へと伝えられ、江戸時代には、土佐、薩摩、伊豆が鰹節の3大名産地と呼ばれていました。
とはいえ、実はこれらの地域以外でも、鰹節は盛んに生産されていた可能性があります。
焼津地方を治めていた田中城主の松平伊賀守忠晴が遺した古文書には、寛永19年(1642)の記録として、「かつおぶし」の名を見ることができます。紀州の甚太郎が燻蒸法を確立する50年前です。
このときのかつおぶしと現在の鰹節が同じものかどうかはわかりませんが、焼津では昔から鰹漁が盛んで、獲れた鰹を保存食として加工していたことは確かです。
当時は生産量が少なかったのかどうか、伊豆の鰹節に知名度で劣っていましたが、1908年(明治41年)に「第一回鰹節即売品評会」が開催されと、西の「土佐節」に対して東の「焼津節」が最高品質を表す横綱に選ばれるなど、高い評価を受けたのです。
焼津鰹節の商標登録情報
1.標準文字商標
登録日 | 平成18年(2006)12月8日 |
---|---|
出願日 | 平成18年(2006)4月3日 |
先願権発生日 | 平成18年(2006)4月3日 |
存続期間満了日 | 平成38年(2026)12月8日 |
商標 | 焼津鰹節 |
称呼 | ヤイズカツオブシ |
権利者 | 焼津鰹節水産加工業協同組合 |
区分数 | 1 |
第29分類 | 静岡県焼津市で製造されたかつお節【類似群コード】32F02 |
2.ロゴ商標
登録日 | 平成20年(2008)11月21日 |
---|---|
出願日 | 平成20年(2008)2月13日 |
先願権発生日 | 平成20年(2008)2月13日 |
存続期間満了日 | 平成30年(2018)11月21日 |
商標 | 焼津鰹節 |
称呼 | ヤイズカツオブシ,ヤイズカツオ |
権利者 | 焼津鰹節水産加工業協同組合 |
区分数 | 2 |
第29分類 | 静岡県焼津市で製造されたかつお節を使用した水産物のつくだに,かつおの削り節,食用魚粉,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物【類似群コード】32F01、32F02、32F11、32F12 |
第30分類 | 静岡県焼津市で製造されたかつお節を使用したそばつゆ,うま味調味料【類似群コード】31A02、31A05 |