三重県の牛と言えば、牛肉のトップブランド「松坂牛」が真っ先に浮かびます。
しかし、それだけではありません。
三重県では乳牛のブランドもあります。
平成19年(2007)2月9日には、大内山酪農農業協同組合(三重県度会郡大紀町大内山3248)によって地域団体商標に登録された「大内山牛乳」です。
三重県の大内山牛乳とは
三重県の「大内山牛乳」とは、三重県の誇る世界遺産「熊野古道」の玄関口にあたる大内山を中心に製造、商標登録されているブランド牛乳です。
大内山酪農農業協同組合による独自の飼育管理マニュアルの下、栄養価の高い牛乳づくりに励んでいます。
生乳は工場に運び込まれてから2日以内に出荷されるなど、新鮮さと安全性にもこだわっています。
酪農家と協同組合の運営する製造工場が一体となって、互いに責任を持って製品を管理し、大内山牛乳の品質を守っています。
三重県の大内山牛乳の歴史
三重県の大内山牛乳の歴史は、第二次世界大戦終戦間近である昭和19年(1944年)に大内山村の6軒の農家によって酪農を開始したことが始まりだと言われています。
この地方は、三重県内でも険しい山間部にあったため、恒常的に不足していたたんぱく質を補うのが目的でした。
つまり、当初は地域での自家消費が目的であり、牛乳の販売を想定していなかったものですが、厳しくも豊かな自然の中で育つうちに良質な牛乳を生産するようになり、次第に地域ブランド化されていったものです。
現在では、大内山牛乳を生産するのは、三重県下に点在するわずか28件の酪農家だけ。厳格な自主基準を守ることにより、高い品質を持つ牛乳の生産を継続しています。
三重県の大内山牛乳のブランディングについての考察
松阪牛に比べると、大内山牛乳の知名度は決して高いとは言えません。
この違いを、両者のブランド化の成り立ちの対比でみてみましょう。
一般的に、ブランディングには4つの道があると言われています。
4つとは
- プランニング
- イメージ
- 消費体験
- 自己表現
です。
プランニングによるブランディングは、計画的にブランド力を高めていくことです。
マーケットに好まれる商品開発を追求していくことによって結果的にブランド力を築くのです。
イメージによるブランディングは、ブランドイメージの持つイメージを追求していく方向です。広告やプロモーション展開が大きな役割を発揮します。
消費体験によるブランディングは、消費者の使用体験によって支持を集めたものが、自然にブランド力を発揮するケースです。
自己表現によるブランディングは、ブランド側がマーケットに提供したい世界観を打ち出し、それに共鳴するファン層がつくことによって成り立ちます。
地域ブランドはたいてい、消費体験によって口コミで評判が広がり、いつしかブランドが確立することが比較的に多いです。
大内山牛乳の場合もそうです。
しかし、松阪牛の場合は例外で、プランニングによる部分が大きいケースです。
もともとは、消費体験の中で自然に松阪牛の評判が広がっていったものですが、共進会へ積極的に参加して名声を得、「肉の芸術品」というキャッチフレーズを打ち出し、松阪牛の商標登録をしたのも早い時期のことでした。
マーケットの口コミだけに頼るのではなく、積極的なブランディングによって松阪牛はゆるぎない名声を築いたわけです。
多くの地域ブランドは、品質へのこだわりのところで思考が止まってしまうものですが、ブランドを築くには戦略と投資も必要です。
その点、大内山牛乳は、いまはまだ、全国的な知名度があるとは言えませんが、ここにきて、商標登録したり、コマーシャルを行ったりと、ブランド化を進めており、徐々に認知度も広がっているところです。
参考:
大内山酪農
三重観光(三重県観光連盟)
NPO法人地産地消ネットワークみえ
三重県の大内山牛乳の商標登録情報
登録日 | 平成19年(2007)2月9日 |
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出願日 | 平成18年(2006)6月9日 |
先願権発生日 | 平成18年(2006)6月9日 |
存続期間満了日 | 平成39年(2027)2月9日 |
商標 | 大内山牛乳 |
称呼 | オーウチヤマギューニュー |
権利者 | 大内山酪農農業協同組合 |
区分数 | 1 |
第29類 | 三重県度会郡大紀町大内山地域およびその周辺地域で生産されて同大内山地域で処理・加工された牛乳 |