熊本県の地域ブランド商標である阿蘇たかな漬(あそたかなづけ)は、阿蘇たかな漬協同組合によって地域団体商標に登録されました。
いまや熊本県を代表するお土産の一つともなりました。
品種では、他の地域の有名な高菜と変わらないそうです。
それがなぜ熊本県を代表する漬物になったのでしょうか。
熊本県の阿蘇たかな漬とは
概要
熊本県の阿蘇たかな漬とは、熊本県阿蘇市及び阿蘇郡で栽培された高菜を主原材料とし、熊本県阿蘇市及び阿蘇郡で製造された漬物のことです。
阿蘇たかな漬は茎部分を中心に使用しているため、シャキシャキとした歯ごたえが持ち味。
また、普通の高菜漬よりもさらにピリッと辛味が効いているのが特徴です。
原料である阿蘇高菜(あそたかな)は、アブラナ科のからし菜の一種で、広島菜、野沢菜など、他産地の高菜漬に使われる品種と基本的には同じだと言われていますが、栽培される環境と生産方法の違いによって、阿蘇地方独特の高菜漬に発展しました。
原料の栽培環境・栽培方法
阿蘇高菜が栽培されるのは、世界一の規模を誇る阿蘇カルデラの中です。
標高500メートル以上の高地で栽培されるため、火の国熊本でありながら、寒冷地の気候の中で生育されます。
さらに、阿蘇地方特有の環境として火山灰が降り積もった水はけのいい土壌があげられます。
高冷地という気候と火山灰土壌が高菜の生産に適していました。
高菜は他の農作業が終わる10月ごろに種撒きされ、高冷地の寒い冬を耐えて、春3月ごろ、一斉に塔立ちしたところを収穫します。
塔立ちとは野菜の成長の過程で、自分自身が大きくなる段階を過ぎて、種子を残すための準備に切り替わった瞬間のことです。
通常、塔立ち後の野菜や種や実に栄養を使ってしまうため、本体の味は落ちると言われますが、塔立ちした瞬間こそ本体にもっとも栄養分が集まっている時期とも言えます。
収穫してすぐ食べないと、急速に味が落ちてしまうため生のものが流通することはありません。
その意味で、もっともおいしい瞬間に収穫した高菜を漬物にすることで、味を封じこめているとも言えます。
生産方法
一般的な高菜漬は葉を含めた高菜の全体を使いますが、阿蘇高菜は細い茎の部分と硬めの葉のみを使い、柔らかい部分は使いません。
茎は、機械を使わず、1本1本手で収穫されます。
塔立ちした高菜の茎はまっすぐ伸び、硬くなっているので、手で力を入れると簡単にポキッと折れます。
このため、この地方では収穫作業のことを「たかな折り」と言います。
収穫された高菜はすぐに塩もみされて樽につけ込みます。
阿蘇たかな漬は2種類
熊本県の阿蘇たかな漬は、浅漬けの「新漬け」と、じっくり漬け込んで発酵させた「古漬け」があります。
新漬けは、少なめの塩分で樽の中に3~5日漬け込めばできあがり。
新緑のみずみずしい色と香り、ピリっとした辛み、シャキシャキした歯ごたえが特徴です。
水で洗わずそのまま食べるのが地元のおすすめ。
古漬けは多めの塩分で2~3ヶ月じっくり漬けます。
漬けているうちに熟成、発酵が進み、うまみが凝縮されます。
古漬けは軽く水で洗ってから、そのまま漬物として食べてもいいし、油炒めなどに調理してもおいしく食べられます。
熊本県の阿蘇たかな漬の歴史
阿蘇高菜はアブラナ科からし菜の一種で、中央アジアが原産地と言われます。
インドから西アジア、北アフリカにかけて香辛料(マスタード)の原料として広まったのが、シルクロードを通って日本に伝えられたと考えられます。
同じからし菜を使った漬物として、広島菜、野沢菜が有名ですが、これらとは品種が違うという説もあります。
もともとは阿蘇地域の各家庭で自家用に生産されていたものを特産品にしようと、熊本県阿蘇事務所が地域の農家に種と樽を支給したのがはじまりとされます。
それが、阿蘇の気候と生産者の努力によって、熊本県を代表するお土産になまで発達しました。
参考:
阿蘇たかな漬協同組 トップページ
こだわりと伝統
食の安心・安全財団
南阿蘇村谷人たちの美術館2016
阿蘇たかな漬の商標登録情報
登録日 | 平成19年(2007)2月2日 |
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出願日 | 平成18年(2006)4月1日 |
先願権発生日 | 平成18年(2006)4月1日 |
存続期間満了日 | 平成29年(2017)2月2日 |
商標 | 阿蘇たかな漬 |
称呼 | アソタカナズケ,アソタカナ,アソズケ,アソタカナツケ |
権利者 | 阿蘇たかな漬協同組合 |
区分数 | 1 |
第29分類 | 熊本県阿蘇市及び阿蘇郡産のたかなを主要な原材料とする熊本県阿蘇市及び阿蘇郡で製造される漬物【類似群コード】32F04 |