石川県の地域ブランド商標である九谷焼は、日本を代表する色絵陶磁器です。
国内はおろか、海外にもその名声は広く知れ渡っています。
人気の秘訣はなんといっても、極めて芸術性の高い模様にあります。
日本を代表する有名な磁器なのに謎が多く、歴史の中でいったん姿を消したこともあるようです。
石川県の誇る九谷ブランドにも紆余曲折の歴史があったのです。
石川県の九谷焼とは
石川県の九谷焼は、最初に窯が築かれた九谷村に由来します。
九谷焼は、日本を代表する色絵陶磁器で、「上絵付け」という手法が使われます。
上絵付けとは、一度焼き上げた上で、釉薬の上から顔料で模様を描き、再度焼いて模様を定着させる技法のことです。
中でも、石川県の九谷焼は、「五彩」とよばれる、赤・黄・緑・紫・紺青の5色の絵の具を使って描かれる彩色法に特徴があります。
絵柄は山水、花鳥などを大胆な構図であしらったものが基本で、窯によって模様の傾向が異なり、青系の絵の具だけを使った伝統の「青九谷」や、赤い絵の具を多用する「赤九谷」などが知られます。
もともとは磁器だけでしたが、陶器も作られるようになりました。
石川県の九谷焼の歴史
九谷焼の発祥と謎の消滅
石川県で九谷焼の歴史が始まったのは、明暦元年(1655)のことです。
石川県内の九谷村というところで鉱山を掘っている最中、磁器の原料である陶石が採掘されたのをきっかけに、磁器生産が開始されたのです。
加賀藩の命を受けた後藤才治郎が、伊万里焼で知られる有田で技術を学んで戻り、陶石の産地である九谷に窯を築いたのが最初です。
才治郎の製作する九谷焼は非常に評判がよく、現在でも「古九谷」と呼ばれて珍重され、高値で取引される名品が多いのですが、たった50年で突然途絶えます。
廃窯の原因はいまだにわかっておらず、九谷焼の「謎」とされます。
九谷焼の復活
九谷窯の廃窯から約100年後、加賀藩は磁器生産の再開を試みました。
すでに技術は途絶えてしまったため、京都から職人を招いて地元の製陶業者の技術指導にあたらせます。
この試みは身を結ばなかったものの、大聖寺(現在の加賀市)に住む商人、吉田屋伝右衛門が技術を伝授された職人を引き取り、1824年、資材を投じて自前の窯を築きました。自身の屋号から「吉田屋窯」と呼ばれます。
伝右衛門は古九谷にほれ込んだフリークだったようです。
後藤才治郎が作陶していた九谷窯のあった所を突き止め、跡地の隣にわざわざ窯を作っています。
古九谷の作風を忠実に再現した作品は、高い評価を受けたものの、採算を度外視したこだわりがあだとなり、たった7年で経営破たんします。
こうして吉田屋窯は閉鎖に追い込まれましたが、吉田屋窯で働いていた宮本屋宇右衛門が独立して、自身の窯「宮本屋窯」を開き、また、加賀藩傘下の大聖寺藩が「松山窯」を築くなど、加賀藩内で複数の窯が誕生、その命脈を保ちました。
世界のKUTANIへ
明治維新になり藩が廃止されると、それまで藩からの支援を受けていた窯元は、独自に経営していく必要に迫られました。
これにより、より高い品質、売れる商品を生み出すため、職人たちの切磋琢磨が始まり、九谷焼の芸術性が飛躍的に高まっていくのです。
中でも、このとき活躍したのが、名匠とうたわれる九谷庄三です。
庄三は、日本に入ってきたばかりの洋絵の具をいちはやく取り入れ、多彩な色彩表現を持つ彩色金欄手という技法を確立しました。
現在の九谷焼の主流となっている手法です。
明治6年(1873)、庄三の九谷焼がウィーン万博で紹介されると、日本伝統の模様の中にどこか洋風のテイストが混じった彩色金欄手は、欧米人の心をとらえ、「ジャパンクタニ」として一躍世界に知られるようになったのです。
世界で人気になった九谷焼は、日本の殖産興業政策の後押しも受け輸出が奨励されました。
明治20年代に生産された九谷焼の実に80%が輸出だったということです。
その後も九谷焼は多くの陶芸作家を生み出し、現在も人気は続いているというわけです。
参考:
石川県九谷陶磁器商工業協同組合連合会
石川県九谷焼美術館
金沢市役所
金沢伝統工芸ネット
伝統工芸青山スクエア(伝統的工芸品産業振興協会)
九谷焼の商標登録情報
登録日 | 平成19年(2007)2月23日 |
---|---|
出願日 | 平成18年(2006)4月3日 |
先願権発生日 | 平成18年(2006)4月3日 |
存続期間満了日 | 平成29年(2017)2月23日 |
商標 | 九谷焼 |
称呼 | クタニヤキ |
権利者 | 石川県九谷陶磁器商工業協同組合連合会 |
区分数 | 1 |
第21分類 | 石川県旧九谷村に由来する製法により石川県加賀地域において製造された陶磁製のきゅうす・コップ・杯・皿・茶わん・徳利・鉢・湯飲み・わん・つぼ・花瓶及び水盤・香炉【類似群コード】19A03、20C02、20F01 |