飛騨一位一刀彫(ひだいちいいっとうぼり)は、岐阜県の飛騨地域(高山市、飛騨市、下呂市の一部、大野郡白川村)に伝わる伝統工芸です。
飛騨一位一刀彫協同組合(岐阜県高山市中切町721)によって地域談大商標に登録されました。
そもそも、一位一刀彫そのものが、飛騨にしかない技術。
しかし、そんな飛騨一位一刀彫にいま存続のピンチが訪れているそうです。
岐阜県の飛騨一位一刀彫とは
岐阜県の飛騨一位一刀彫は、木目が緻密で加工しやすく、光沢が美しいイチイを使い、彫刻刀のみで製作する木工品です。
木目の美しさを残すため、加飾、着色はせず、仕上げもヤスリなどを使わず手彫りで行い、刃跡をあえて残す手法が特徴です。
また、幹の中心部分が赤く、外周部が白いという2色の色調を持つイチイの特性を生かし、デザインの中に取り入れるのも飛騨の職人のこだわりです。
地元岐阜県の木であるイチイは、漢字で「一位」と書きます。
遠く奈良時代、天皇即位のお祝いにイチイで作った「笏」を献上したところ、その素材の美しさから最高位を著す「正一位」の称号を授かったのが語源とされます。
そんなイチイ材でも特に貴重な樹齢400~500年の原木を使って、小動物や仏像をかたどった置物が制作されます。
岐阜県の飛騨一位一刀彫の歴史
岐阜県のほこる飛騨一位一刀彫の源流は、奈良時代から盛んになった寺社仏閣の造営技術に遡ります。
木材資源に恵まれる飛騨地域では、材木の加工産業が発達し、各種の職人を輩出しました。
その中で代表的な人物が松田亮長(すけなが)です。
江戸時代に活躍した根付彫刻の職人だった亮長はイチイ材を使ってノミだけで彫り上げる一刀彫の手法を確立。
その技術が飛騨の職人仲間に広がり、飛騨だけに伝わる伝統工芸として発達したのです。
岐阜県の飛騨一位一刀彫の今後
岐阜県の飛騨地方のみに受け継がれる伝統工芸として花開いた飛騨一位一刀彫ですが、いま存続の危機に立たされていると言われています。
理由は、材料であるイチイの枯渇です。
イチイそのものは、沖縄を除く北海道から九州まで日本全国で自生、栽培されているのですが、問題は飛騨一位一刀彫に使えるほどの樹齢のものが少ないことです。
イチイの特徴は何と言っても年輪の緻密さにあります。
作品に使えるだけの年輪を持つ太さに成長するには、400年以上の歳月を必要とします。
岐阜は木材資源が豊富なことでも知られますが、すでに地元のものでは足りなくなり、現在は北海道から仕入れているそうです。しかしそれも乏しくなりつつあり、現在は、小型のものしか制作できなくなっているのが現状だそうです。
飛騨一位一刀彫協同組合では植林などの活動もしていますが、飛騨一位一刀彫に使用できる太さに成長するためには400年以上かかるため、需要に追いついていないのが現状です。
材料が一位でなくなったら「一位一刀彫」もなくなってしまいます。
イチイではない木材にスイッチするか、あくまでイチイにこだわり、資源の枯渇とともに伝統の幕を閉じるのもやむなしとするか、厳しい選択を迫られているということです。
参考:
高山市役所
高山商工会議所
伝統工芸青山スクエア
飛騨一位一刀彫の商標登録情報
登録日 | 平成18年(2006)12月1日 |
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出願日 | 平成18年(2006)4月28日 |
先願権発生日 | 平成18年(2006)4月28日 |
存続期間満了日 | 平成38年(2026)12月1日 |
商標 | 飛騨一位一刀彫 |
称呼 | ヒダイチイイットーボリ,ヒダイットーボリ,ヒダイチイ,ヒダボリ |
権利者 | 飛騨一位一刀彫協同組合 |
区分数 | 1 |
第20類 | 一位の木を用いて飛騨で製作される木製彫刻 |