福岡県の地域ブランド商標である八女茶(やめちゃ)は、平成20年(2008)3月7日、全国農業協同組合連合会、福岡県茶商工業協同組合によって地域団体商標に登録されました。
八女茶は、生産から加工まで福岡県八女市とその周辺地域で行われた緑茶の総称です。
もともとは茶の有名な産地ではなくどちらかといえば後発。
八女茶はいかにしてブランドを築いたのでしょうか。
福岡県の地域ブランド商標、八女茶の特徴
お茶の栽培に適した自然環境
福岡県の八女茶は甘にとコクにすぐれ、旨みが強いのが特徴とされます。
全国茶品評会では受賞の常連で、特に、玉露の部では、平成28年度の「第70回全国茶品評会」で16年連続の産地賞受賞の記録を更新中です。
福岡県の八女地方は、豊富な流量を誇る筑後川と矢部川に挟まれた山間部から下流の筑後平野にまで広がり、多雨、昼夜の温度差、さらに、山間部では朝夕に霧が発生しやすいなど、茶栽培の環境に恵まれた土地です。
しかし、八女茶の評価が高いのは自然環境の恩恵だけではありません。
量よりも質を追求
一般的なお茶の栽培では、年4回番まで収穫しますが、八女地域では基本的に2回までにしています。
芽重型と呼ばれる栽培法で、一枚一枚の茶葉が大きく育ち、同じ品種でもコクやうまみが大きく違います。
芽重型は1本の木になる新芽の量が比較的に少ないため2回しか収穫しないわけですが、すると当然、栽培面積比の収穫量は通常の栽培法より低下します。
つまり収穫量よりお茶の質を重視しているということです。
手間暇を惜しまない
八女茶の中でも特に評価の高い玉露においても、栽培方法がその背景にあります。
玉露は品種としては煎茶と同じですが、生育方法が異なります。
その生育方法とは、新芽が出てから収穫するまでの間、茶の木に当たる直射日光を制限するというものです。
お茶の旨みの元になるアテニンは日光に当たると苦み成分であるカテキンに変わってしまいます。
直射日光を遮ることでアテニンが豊富でうまみ成分の多い玉露ができるわけです。
全国どこも玉露の作り方は同じですが、近年は遮光に使う日よけとして化学繊維製のネットが普及している中で、八女地域では昔ながらの稲わらの使用にこだわっています。
また、通常は新芽が出てから収穫するまで2週間ほど被覆するところ、八女地域は伝統的に約20日間被覆法を採用しています。
このように、手間暇かけて育てることでおいしいお茶ができるのです。
福岡県の地域ブランド商標、八女茶の由来
日本でお茶の栽培が始まったのは佐賀県・福岡県
日本におけるお茶の歴史は、奈良~平安時代に中国に留学した修行僧が伝えたのが最初とされます。
伝来から数百年の間、お茶はもっぱら中国からの輸入に頼っており、このため非常に効果で裕福な層のたしなみでした。
日本で初めて栽培が始まったのは、鎌倉初期の(1191年)、臨済宗の開祖である栄西が宋からお茶の種を持ち帰り、佐賀県の脊振山(博多の聖福寺が最初という説もあり)に植えたのが最初だとされます。
その後、栄西が撒いた種から成長した木から種子が採取され、京都の宇治をはじめ、全国に拡散していったものです。
八女地域とすぐ目鼻先で栽培が始まったわけですが、八女地域でお茶の栽培が始まるまでには少し時間がかかり、1423年のこととされます。
後発の八女茶がブランドを築くまで
栄林周瑞が八女に霊巌寺(れいがんじ、福岡県八女市黒木町笠原)を建立した際、茶の栽培法と加工法を地域に伝えたのが八女茶の始まりです。
しかし、その後、江戸~明治期を通してお茶の生産が続けられていたものの、生産量が少なかったこともあり、大きな産業には発展しませんでした。
現在のブランドを築く第一歩となったのが、大正時代に行われた製茶法の改革です。
それまで八女茶は、未熟な製法である釜炒りによって茶葉を加工していましたが、蒸しあげた茶葉を手で揉み込む製茶法「蒸製法」(現在の煎茶と同じ製茶法)が考案され、釜炒り茶を圧倒し始めていました。
そこで八女地域でも、蒸製法の先進地だった静岡から生産者を招いてその製法を会得したのです。
以降、茶業組合では、蒸製法で加工されたお茶のみを「八女茶」と呼ぶことにし、ブランデド化を図ったことが現在の発展の基礎になっているということです。
参考:
福岡県茶業振興推進協議会
八女市茶のくに観光案内所
福岡県庁
八女市役所
八女茶の商標登録情報
登録日 | 平成20年(2008)3月7日 |
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出願日 | 平成18年(2006)12月20日 |
先願権発生日 | 平成18年(2006)12月20日 |
存続期間満了日 | 平成30年(2018)3月7日 |
商標 | 八女茶 |
称呼 | ヤメチャ |
権利者 | 全国農業協同組合連合会、福岡県茶商工業協同組合 |
区分数 | 1 |
第30分類 | 福岡県内の茶生産者が福岡県八女市及びその周辺地域(熊本県及び佐賀県の八女地域に隣接する地域を含む)において生産した荒茶を福岡県内で仕上げ加工した緑茶【類似群コード】29A01 |