愛知県の地域ブランド「西条の七草」

西条市農業協同組合 (愛媛県西条市神拝字出口甲478-1) は2007年3月30日に、愛媛県西条市産の七草を「西条の七草」として地域団体商標に登録しました。

この場合の七草は「春の七種(ななくさ)」のこと。

地域の主婦たちのアイデアで、七草がゆ用の野菜セットを販売したところ評判になったことから、商標登録して地域ブランド化しようという試みです。

さてその勝算は。

目次

そもそも七草とは

1月7日に七草を入れたおかゆを食べ、1年間の無病息災を祈る風習は、全国的に定着しています。

ところで、本題に入る前に、七草とは何かということについて、ちょっとだけ振り返ってみましょう。

改めて調べてみると実は意外に知らないことが多いのです。

まず、一般的には、1月7日におかゆに入れて食べるセリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロのことを「七草」と呼んでいると思いますが、どうも、それだけが七草ではないようです。

そもそも秋の七草があって、それに対応する形で春の七種が成立したことがあり、区別する意味で、春バージョンは、「七種」と書いて「ななくさ」と読ませるようになったと言われています。

また、現在の七草が定着したのは1362年頃に著された『河海抄(かかいしょう)』で四辻善成が「セリ、ナヅナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ、これぞ七種」と紹介したのがはじまりとされます。

それ以前は、ここで紹介した7種ではない草があてられていたり、また、そもそも7種ではなく、5種や8種だったりという時代もあったようです。

また、スズナは蕪のこと、スズシロは大根のことと訳されていますが、これには異説もあります。

正月7日に七草を入れたおかゆを食べる風習は、中国の「人日(じんじつ)の節句」がもとになっています。

中国ではこの日、7種類の野菜を煮込んだ汁物を食べる風習がありました。

これに、日本に古くからあった「若菜摘み」の行事が合わさったものだと考えられます。

若菜摘みとは、年初のまだ寒い時期、野にでて芽吹いたばかりの草を摘み取るという風習です。

早春の寒い時期に芽を出す草花は強い生命力をもっており、その力をさずかることで無病息災を祈ったものだと思われます。

このように、調べてみると意外に知らないことが多いものです。

愛知県の西条の七草とは

さて、本題です。

愛知県のJA西条では、七草を1セットにした製品を「西条の七草」として京阪神を中心に毎年約100万パック出荷しています。

全国的な風習である七草がゆを、西条市ではなぜ地域ブランドとして確立することができたのでしょうか。

ひと昔前までは、七草がゆを作るとき、材料をそれぞればらばらに買ってくるか、自生しているものを摘んでいたものです。

セリ、スズナ(蕪)、スズシロ(大根)は八百屋さんで調達できますし、ナズナやハコベラは小売店ではあまり見かけませんが、全国的に自生しているので調達するのは簡単です。

とはいえ、7日にしか食べない七草がゆのために材料をそろえると使いきれない無駄が発生してしまうことがあります。

この点に目をつけた地元の主婦が、1982年、使いきりサイズに調整した七種をワンパックにして発売したところ人気になりました。

この背景には、衛生的な観点から自生しているものを食べることに抵抗感が強くなってきたこともあります。

七種の栽培には、名水百選にも選ばれている「うちぬき水」を活用するとともに、12月31日から4日以内に収穫したものだけに限定して出荷し、安心・安全をアピールしたことも奏功しました。

いまでは小売店の店頭などでも、正月7日になると七草をセットにして販売するようになりましたが、それでもJA西条が依然として七草の生産量全国トップクラスです。

七種がゆが全国的な風習として広がっていったのは、一つには、1月の寒い時期に七草が全国どこでも簡単に入手できることがあります。

つまり、突出した産地はそもそもありませんでした。

ナズナやハコベラにいたっては一般的に雑草と分類されていたものです。

ワンパックにして販売したらどうだろうという、アイデアの産物であり、ニーズがあることがわかって追従する事業者がわっと参入してきました。

それでも西条の七草がトップブランドを維持しているのは、先行者利益によるものです。

先行者利益とは、競合よりもいち早く市場に参入したものが有利にブランドを築き、もっとも多くの利益を上げるという経済の法則です。

市場を新たな市場を生み出した者には、開拓者として強く認識されるので、強い競合がでてきてもブランド力がなかなか落ちないのです。

地域団体商標の制度がスタートした2006年に、いち早く商標登録出願し、ブランドの保護育成に着手したJA西条の判断はまことに賢明だったと言えるでしょう。

参考:
JA西条
いよ観ネット(愛媛県観光物産協会)
愛媛県

西条の七草の商標登録情報

登録日 平成19年(2007)3月30日
出願日 平成18年(2006)7月20日
先願権発生日 平成18年(2006)7月20日
存続期間満了日 平成29年(2017)3月30日
商標 西条の七草
称呼 サイジョーノナナクサ,サイジョーノシチクサ,サイジョーナナクサ,サイジョーシチクサ
権利者 西条市農業協同組合
区分数
第31類 愛媛県西条市産の七草(セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロ)
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