商標登録をする際、商標を含む産業財産権について専門の法律家である弁理士に代行を頼むのが一般的です。
商標登録で検索すると、いろいろな特許事務所や特許業務法人が商標登録の代行ビジネスをしていることが分かります。
目移りしてしまいそうですが、ところで、どんな基準で商標登録を依頼する事務所を選んでいますか。
ポイントになるのは実績や経験もあるでしょう。だけど、「やっぱりコスト」という人も多いと思います。
確かに、コストは重要な要素です。
だけど、見た目の安さだけで安易に選んでしまわないように注意してほしいのです。
弁理士も価格競争の時代になった
商標登録を代行している特許事務所はたくさんありますので、どこの事務所でも自分の事務所を利用してもらうメリットを宣伝するのは当然です。
以前は、弁理士費用は日本弁理士会によって弁理士報酬・手数料の標準額が定められてり、どの事務所に頼んでも同じ料金でした。
しかし、平成13年1月6日の弁理士法改正により標準額は廃止されており、定価や基準価格は一切ありません。
いまはすべての業務において、事務所が自分たちの戦略や考え方にしたがって、自由に手数料を設定できるようになっています。
すると、当然価格競争が始まります。
どこの弁理士に頼んでも一緒ではない
商標登録の作業そのものは、どこの事務所がやっても手順は同じです。
したがって価格訴求が大きなポイントになるのは当然です。
どこの事務所でも自分の事務所の料金設定がいかにリーズナブルかで競っています。
しかし、決して、価格だけに目を奪われてほしくないのです。
なぜなら、どこの事務所に依頼しても同じではなく、品質の違いがあるからです。
具体的にどんな点が違うのでしょうか。
1.腕のいい事務所は失敗が少ない
商標登録は出願すれば必ず通るわけではなく、出願数に対する登録数の割合は70%です。
つまり、3割は落ちることになります。
どうしても登録できない商標は誰がやっても一緒ですが、通るはずの商標登録をさえ失敗してしまうことがあります。
どうして失敗するのかというと、事前の調査が甘かったり、出願書類の書き方が悪かったりといったノウハウがない、あるいは、数をこなそうとするあまり一つひとつの仕事が雑になることはあります。
2.しっかり相談に乗ってくれない
安く商標登録を代行してくれるところは、当然ながら低価格のぶん、数をこなさなければなりません。
このため、時間をかけず、機械的に作業をこなすようになる傾向があるのは必然です。
しかし、商標登録は依頼者のビジネスを促進するための重要なステップです。
ただ商標登録すればいいわけではなく、商標登録することで、どうやってその後のビジネス展開に生かしていくかが重要です。
そのためには、依頼者の思いをしっかり汲んで、それに即した取り組み方を考えるというプロセスが必要です。
とくにかく商標登録できればいいというところに特化すると、せっかく商標登録してもちゃんと商標を守れない、あるいは、その後のビジネスになんら生かせないといった本末転倒な結果になりかねません。
安いには安いなりの理由がある
弁理士業務もいまや過当競争の時代です。
他の事務所より少しでも価格を安くして顧客を獲得したいと考えるのは当然です。
それぞれに企業努力にとってなるべく安いコストでかつ、高い品質を目指していることでしょう。
けれど、あまりにもコストが安い場合は考えものです。
事務所を運営し、人を雇って給料を払うのですから、どうしたって一定のコストはかかります。
すると、極端に安い場合、どこかにしわ寄せがいくのは当然なのです。
たとえば、よくあるのが、成功報酬制や、返金制度です。
商標登録は、出願時と登録成功時に2度にわけて報酬を設定するのが一般的です。
商標を出願しても結局登録できなければ出願費用が無駄になるかもしれません。
そこで、登録できなかったときは出願の際の手数料を返金する、あるいは、登録が完了するまで料金は支払わなくていいという制度です。
確かに、出願費用が無駄にならず、お得な気がしますが・・・ちょっと待ってください。
話はそう簡単ではありません。
返金制度や成功報酬制度の落とし穴
安い値段には必ず理由があります。
もちろん、事務所の企業努力で安い場合もありますが、そうではない場合もあります。
たとえば、以下のようなことです。
1.難易度の高そうな商標は受けつけてくれない
返金制や成功報酬制を採用しているところは、商標登録できなければ料金がもらえないわけですから、大損になってしまいます。
そこで、簡単に商標登録できそうな案件は受け付けてくれますが、ちょっと難しそうな案件だと断られることが実際に多いようです。
2.他の名目で手数料がかかる・返金してくれない
登録できなかったときに返金手数料を返してもらうことができたら、書面作成料など別の名目で料金を請求されたというケースはよく聞きます。
また、登録できなかったら返金と広告でうたっていたのに、実際には返金に応じてくれないとか、返金の条件を後から言われた、ということもあるようです。
本当に返金してくれるのか、そのほかの条件はないのかといったことをよくよく確かめる必要があるでしょう。
いずれにしても安いのには安いだけの理由があります。
商標登録は依頼者様のビジネスを促進する重要なものです。
良心的な事務所は、コストが決して高いわけではありません。適正料金でやっています。
したがって、コストだけではなく、どれだけ真剣に取り組んでくれるか、どれだけ依頼者の思いをくみ取ってくれるかといった視点で代行業者を選定することをぜひお勧めします。