ある日突然、「あなたはうちの商標を侵害している」という商標侵害の警告書が届く、よくあるケースです。
警告書には、商標侵害をやめ、賠償額を払うようにという要求まで書かれていることがあります。
誰だってこんな警告がきたら慌ててしまうのも無理はありません。
そこで、商標を侵害しているという警告がきても慌てないよう、対処法について知っておきましょう。
本当に商標登録されているか確認する
他人の商標を侵害した場合、使用を中止するのはもちろん、場合によっては損害賠償を請求され、また、刑事責任を追求された場合、最高で10年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金を科されることさえあります。
極めて重いペナルティです。
それだけに、「商標権を侵害している」などと突然言われたら驚いてしまうのも無理ありません。
しかし、焦るのは禁物です。冷静に対処しましょう。
実務的には、専門家である弁理士にまずは相談すべきですが、セオリーとしての対処法について解説します。
まず、警告してきた相手に慌てて連絡をとるのは厳禁です。
まずは、商標侵害の事実を確認しましょう。
相手の言う商標が、本当に登録されているかどうかを確認するのです。
実際によくあるケースでは、他人の商標を無断で勝手に出願しておいて、本来の商標権者に不当な価格で買い取らせるという商売をやっている業者がいます。
このような業者が、本当に商標を登録しているケースは稀です。
他人に買い取らせる目的で自分が使っていない商標を勝手に登録するのは不正出願に当たるため、登録されることはまずありません。
出願しただけでも特許公報に乗ってしまうので、登録している商標と勘違いしないよう、よく登録情報を確認しましょう。
商標の侵害が成立しているか確認
調べた結果、確かに商標登録されていることが確認できたとします。
でも、大丈夫です。
商標権を侵害していると確定したわけではありません。
本当に商標権の侵害が成立しているかどうかを確認しましょう。
商標権の侵害が成立しているかどうかを判断するには、次のポイントがあります。
1.商標権が存在していなければ商標侵害は成立しない
いったん商標登録されていても、権利が失効していたり、取り消されたりしていることがあります。
権利が存在していなければ、商標の侵害は成立しません。
そこで商標の状態がどうなっているかを特許庁のデータベースで確認しましょう。
2.商標の侵害は類似性と区分の2つで見る
商標権を侵害していると確定するためには、まず、商標が同一、もしくは似ているということを証明できなければなりません。
さらにもう一つ条件があり、商標を使用している区分に該当しなければ、同一の商標であっても商標侵害にはなりません。
区分というのは、商標の使用範囲を指す法律用語で、商品・サービスの分野ごと45分類にわかれています。
商標を登録するときに、区分を一つ、もしくは複数指定することができます。
たとえば、商標を登録するときに、警告してきた相手は、エステ店として登録していたとします。
自分が経営しているのは飲食店だった場合、エステサービスと飲食サービスは区分が異なるので同じ店名を使っていても商標侵害には当たらないわけです。
損害の立証責任は相手側にある
調査の結果、商標の侵害が成立している可能性が高いと判断されたとします。
すると、高額な賠償請求に応じなければならないのかというと決してそういうわけではありません。
商標権の侵害行為によって損害が発生していることを立証する責任は、訴えた側にあります。
もし、その算定の根拠があいまい、または理屈にあっていなければ、反論する余地も残されています。
さらに、例えば、訴えてきた相手と自分が営業している地域が物理的に離れており、相手の営業状況に影響しないとか、あるいは、商標の知名度がほとんどなく、商標の力ではなく自身の営業努力によって売れたものであることが証明できれば、相手の損害の根拠は崩れます。
とはいえ、商標の侵害が事実なら、いさぎよくあきらめ、使用を中止し、商標の侵害にあたる商品の回収、広告の中止などに応じなければなりません。
変に反論すると相手も意固地になる可能性もあるので、穏便に話し合いで妥協点を見つけていくことがベターです。
なお、すべてにおいて言えることですが、もし商標侵害の警告を受けたら、安易に素人判断せずに、専門家である弁理士に相談することを重ねてお勧めします。