大阪の食肉業者が商標登録している鶏肉加工食品とそっくりな商品が売られているとして販売差し止めと損害賠償を求めていた裁判で5月19日、和解が成立しました。
訴えていたのは鶏肉専門店を営むシマナカ。
スティック状に加工され、歩きながらでも食べやすいと人気の金のとりからを開発した会社です。
訴えられていたのは金のとりからとそっくりな黄金のとりからを販売する食肉卸ピーコックフーズ。
ピーコック社側は黄金のとりからの商標使用を停止した上に解決金を支払うことになりました。
金のとりからと黄金のとりから、確かに似ていますが、問題は商標だけではなかったようです。
一字違いの商標
今回の商標権の侵害事案の経緯から振り返っていきましょう。
シマナカが金のとりからの販売を始めたのは2009年。
鶏むね肉をスティック状にカットして揚げた独特の製法により、歩きながら食べやすいと評判になり、フランチャイズを含め国内外で23店舗を展開するまでのヒット商品になりました。
メディアでも度々紹介されたこともあって、全国的に知名度が広がっている商品です。
2011年には“鳥の唐揚げの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供”として金のとりからを商標登録しています。
ところが、2012年ごろから、一字違い黄金のとりからが全国各地の露店などで販売されるようになりました。
調べてみたところ、愛知県の食肉卸ピーコックフーズが商品を製造して全国の露天商に降ろしていたことが発覚。
シマナカ側は2014年、ピーコックフーズに対して、黄金のとりからの販売差し止めと500万円の損害賠償を求めて提訴しました。
人気に便乗しようとしたのは明らか
シマナカ側の言い分が全面的に通ったかたちの今回の裁判、ピーコックフーズは和解に同意せざるをえなかったのはなぜでしょう。
金のとりからと黄金のとりから、確かによく似ています。
しかし、とりからも金も特別な造語というわけはでありません。
調理法としてもポピュラーだし、コンビニエンスストアなどでもスナック風に加工された商品を販売しています。
それなのに、ピーコックが敗れたのにはわけはあります。
商標は1文字違いですが、スティック状に加工した商品の特徴や、パッケージの形状からデザイン、色までそっくりでした。
露天商の中には、金のとりからを取り上げた雑誌を切り抜いて、POPに使っていたところもあったそうで、商品の人気に便乗しようとしたのは明らかです。
露店でこっそり売っているだけなら目立たないと思ったのでしょうか。
もちろん、立派な商標権の侵害であり、許されることではありません。
自社で人気商品をつくる努力をせず、ヒット商品に安易にあやかろうとしたピーコックフーズ、痛い授業料を払うことになったのです。