過去に3度も廃案になった「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ、「組織犯罪処罰法の改正案」が今国会で審議され、3月21日、閣議決定しました。
テロ対策を主眼にしたものですが、実は「商標法違反」も対象に入っています。
商標法違反を計画したら、テロリストになってしまうのでしょうか。
閣議決定までの経緯
いわゆる「共謀罪」については、アメリカの911テロ直後から、日本でも必要性が議論され、政府は2005年に最初の法案を提出しました。
一定の組織の構成員が重大犯罪にいたる計画を合意しただけで逮捕・起訴できる点が最大のポイントです。
これにより、テロが起こって重大な被害が発生してしまう前に計画にかかわった人物を拘束し、犯罪の未然防止に役立つと期待されました。
一方で、組織構成員の定義があいまいで、一般市民が構成員とみなされる懸念がある点や、社会運動、労働運動などにも適用されるのではないかといった国民の不安が払しょくできず、廃案になりました。
政府は同年、再び法案を再提出しましたが、2009年に再び廃案になり、そして、今回、テロ等組織犯罪準備罪として改めて提出していたものです。
国際テロ組織の活動が、紛争地域だけではなく、アメリカやフランス、イギリスなど世界の主要都市に拡散している現状で、我が国でもテロが現実の脅威となりつつあります。
アメリカ、フランス、イギリス、ドイツなどでは同様の法案がすでに存在しています。
テロだけではなく、マフィアや暴力団による犯罪、あるいは、悪徳商法についても、必ず事前共謀による合意を前提とすることから、これからの犯罪の未然防止のために一定の必要性はあると言えるでしょう。
商標法違反が対象になる理由
ところで、法案の是非は置いておくとして、テロ等組織犯罪準備罪の対象に商標法が含まれていることについてです。
テロと商標に何の関係があるのでしょうか。
今回のテロ等組織犯罪準備罪は、“テロ”とは言っていますが、それだけではなく、暴力団や詐欺集団、悪徳商法集団による経済犯罪行為も対象です。
具体的に、法務省の説明では、以下のようなケースが該当するということです。
- 偽ブランドの販売を繰り返している集団の構成員らが、海外の有名ブランドの偽物のバッグを輸入して販売することを計画
- 暴力団組員らが、対立する暴力団の構成員を襲って監禁した上、拳銃で射殺することを計画
法務省「組織的な犯罪の共謀罪~対象となり得るケース・ならないケース~」
要するに、犯罪行為を対象としているものであって、うっかり他人の商標と似た商標を使ってしまったような、一般的な商標侵害事案は相当しないようなのでご安心を。
参考:
佐賀新聞 「共謀罪」が閣議決定
法務省 「組織的な犯罪の共謀罪」に対する御懸念について
法務省 組織的な犯罪の共謀罪~対象となり得るケース・ならないケース~
組織的な犯罪の共謀罪に関するQ&A
日テレNEWS24 “共謀罪”法案閣議決定 野党は徹底抗戦へ