緑茶飲料最大手の伊藤園が商標出願していた「大茶会」が、2月3日、正式に商標登録されました。
大茶会は、茶事にまつわる歴史的な行事で、現在でも茶業界ではイベント名などに使っています。
それが商標登録されたことで、今後は、大茶会の商標使用に制限がかかることになり、茶業界で波紋を呼んでいます。
伊藤園による商標登録の経緯
伊藤園が大茶会を商標登録出願したのは平成28年(2016)6月22日。
文字のみの商標で、指定区分は、第30類、茶、茶飲料、第35類、茶の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,茶飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、第43類、飲食物の提供です。
同社では、2014年から小売店の店頭などで、「大茶会」と銘打った販促企画を実施しており、また、世界遺産を舞台に同社のCMに出演中の芸能人などを呼んだ大規模なイベント「世界遺産大茶会」などを開催しています。
将来的には商品名に使うことも検討し、上記のような区分指定になったようです。
大茶会とは何か
特許庁の判断では、「大茶会」は商標として一般名称化していないと判断したようですが、歴史的に使われてきた用語でもあります。
1587年11月、天下統一を果たした豊臣秀吉が、全国に自分の権威を示すため、京都北野天満宮境内において催した大規模な茶会、北野大茶会(「きたのだいさのえ」、「北野大茶湯」とも書く)が有名です。
現在でも、お茶関係のイベント名で使われることが少なくありません。
たとえば、東京都と公益財団法人東京都歴史文化財団は、日本の伝統文化・芸能を国内外へ発信する伝統文化事業の一環として、茶道を体験するイベント「東京大茶会」を平成20年から毎年秋に開催しています。
静岡県では、2001年から不定期に開催している「世界お茶まつり」の第6回大会として、富士山を眺めながらお茶会を楽しむ「富士山大茶会」を開催するなど、「大茶会」の商標を様々な形で使っています。
今後は、伊藤園が商標登録した指定区分においては、同社の許可がないと、「大茶会」を使用できないことになります。
大茶会は一般名称とはされなかった
歴史のある用語であり、現在でも多くの場面で使われる表現ですが、特許庁は一般名称とは判断しなかったようです。
商標法では、広く一般の慣用表現として使われる呼称は商標として認められないとされています。
有名なところでは、「エスカレータ」は、米オーチス社の登録商標でしたが、あまりに一般名称として広まってしまったため、同社は1950年に商標権を放棄しました。
大茶会は一般名称ではないとみなされたわけですが、大茶会を商標として一企業が独占することに茶業界は問題視する声が上がっています。
いまのところ、異議申し立てなどの動きは見られないようですが、今後、議論を呼びそうです。