特許庁は6月17日、地域ブランドの保護育成のために導入された地域団体商標の登録件数が600件に達したと発表しました。
600件目となった商標登録は広島県庄原市の和牛ブランド比婆牛です。
制度スタートから10年の地域団体商標
地域団体商標制度は平成18年4月に導入された比較的に新しい商標です。
自分で商標を使う目的ではなく団体の構成員が共同して使用する目的の団体商標の一つであり、協同組合や業界団体だけでなく、商工会議所やNPO法人でも登録が可能です。
地域と商品名の組み合わせなど通常の商標登録では認められにくいような商標でも登録できるなど審査の要件を緩和することで、地域ブランドの保護や振興に役立てようというもの。
地域団体商標として登録することにより、以下の4つのメリットがあります。
- 地域内における構成員の結束強化
- ブランド意識の向上
- 模倣品の抑制
- 商品・サービスの認知度向上、イメージアップ
制度開始から10年が経ち、これまで地域産品や伝統工芸品などの分野で全国各地から商標登録が行われ、比婆牛の登録でちょうど600件に達したのです。
比婆牛の名称の由来
地域団体商標登録600件目になった比婆牛は、広島県庄原市産の和牛ブランドで、申請したのは庄原農業協同組合です。
現在の庄原市はその昔比婆郡と呼ばれていました。
たたら製鉄が盛んに行われていたことから役牛として和牛の改良に取り組んできたことが名産品誕生の背景にあります。
江戸時代の日本人に肉食の習慣はなかったので牛はもっぱら使役用として育成されていたのです。
比婆郡の役牛は日本最古の蔓の1つである岩倉蔓を始め、血統がよいとされる蔓が多く飼育されていました。
つる(蔓)牛とは、特定の地方で飼育された固有の血統を持つ牛の品種のことです。
明治時代以降になると、それまで役牛として飼育していた牛が肉牛へと転換され、同じく古くから牛の名産地として知られた但馬牛との交配を経て、比婆牛が誕生しました。
すると比婆牛は全国和牛能力共進会で第4回(昭和57年)と第5回(昭和62年)の2大会連続で日本一に輝き、昭和63年には農林水産祭において最高の栄誉とされる天皇杯を受賞、日本一の和牛として認定されたのです。
現在、以下の基準を満たす和牛肉のみを比婆牛として認証しています。
- 牛の父、母の父、母の母の父のいずれかが広島県種雄牛である
- 庄原市内で生まれ、JA庄原管内で最長期間肥育された
- 肉質等級が3等級以上である
- 市が指定した県内の屠畜場で屠畜された黒毛和種の去勢牛または未経産牛である
- 庄原市長が発行した比婆牛素牛認定書を有している
特許庁としては、今後も、地域団体商標を通じた地域経済の振興に寄与するため、地域団体商標制度の周知活動などを行っていくということです。