五輪マスコットは商標登録を見越してネーミングをプロに

2020年東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は3月6日、東京都内で会合を開き、デザインを一般公募することが決まっている大会マスコットキャラクターについて、ネーミングはコピーライターや法律家など実績のあるプロに限定して募集する方針を決めました。

オリンピックについては、ご存知の通り、いったん大会エンブレムの決まった佐野研二郎氏デザインの作品に模倣疑惑が持ち上がり、大騒ぎの末、白紙撤回が決定され経緯があり、組織委員会は相当ナーバスになっているようです。

とはいえ、ネーミングをプロに依頼したからどうなるというものでもないのが実情です。

目次

デザインは一般公募もネーミングはプロに

デザインは一般公募するが、ネーミングは専門家だけの限定募集とすることになった大会マスコット。

マスコットの選考を担当する検討会議の生駒芳子副座長は決定の理由として、「ネーミングは国内外で商標権のハードルが高い」、さらに、「商標登録だけでなく、論理性も求められる」などと話していたそうです。

別の席で、検討会議のメンバーの一人である夏野剛氏も「マスコットはエンブレムよりもはるかに難易度が高く、炎上必至の予感がする」などと警笛を鳴らす発言をしており、慎重論が広まっています。

大騒動になったエンブレム問題の轍は二度と踏めないと、組織委員会側は過剰なほど神経をとがらせているようです。

商標調査の信頼性は高いのだが

ところで、マスコットの募集方法や選考方法に慎重を喫するのは結構ですが、募集を専門家に絞ったところで一般公募と大きな違いがあるようには思われません。

商標登録についても、候補を絞った上で、類似商標がすでに存在していないか調査し、商標登録できそうもなければ候補から外せばいいだけです。

一般的に、商標登録出願をする際、弁理士がどういう調査をするかというと、特許庁のデータベースでわりと簡単に検索できます。

なので、特許事務所によっては事前調査を無料にしているところも少なくありません。

ちなみに、アインリンク国際商標特許事務所でも調査料は無料です。

むろん、100%完璧ではありませんが、事前調査によって「商標登録可能」と判断した案件が拒絶査定を受ける(商標登録が認められない)ケースは、5%もありません。

さらに慎重を喫するなら、有料になりますが、さらにもう一段、信頼性の高い調査を行うことも可能です。

外国の商標を調査する場合も、それぞれの国に法律事務を扱う専門家がいるので、外国の商標法に詳しい事務所に依頼すれば信頼性の高い調査ができます。

大事なのは応募者の質ではなく調査の精度

そもそも、前回のエンブレム問題のときも、候補を絞った段階で商標調査をしておけばよかったのに、それをしなかったことが問題の根本的な原因です。

確かに、コピーライターなど専門家は商標の知識にもたけているので、その点で、応募時点で著作権や商標権の問題がクリアになっているものだけが集まってくる期待はあるでしょう。

しかし、募集の方法がどうであろうと、選考から決定にいたる段階で、徹底的な商標調査のプロセスが必要なのは言うまでもありません。

プロに限定したからといって模倣や類似のネーミングを完全に排除できるわけではなく、むしろ大事なのは、調査の精度のはずです。

もめにもめた大会エンブレムも、プロのデザイナーがデザインしたものだったことを検討委員は忘れているわけではないと思いますが。

参考:
テレ朝ニュース 東京五輪マスコット 命名は“プロ限定”に
JIJI.COM 名前は専門家の提案で=20年東京五輪マスコット
共同通信 マスコット名、募集はプロ限定
朝日新聞デジタル 五輪マスコット選び、「炎上」大丈夫? 商標登録、難題

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