「グーグル」は一般名称に非ず――
フランシスコ連邦高裁は、アメリカのインターネット大手「グーグル」の商標は動詞として一般名称化しており、商標権は消滅しているとする原告の主張を退けました。
これにより、「グーグル」の商標権が同社のみに帰属することが認められました。
ただし、「いまのところは」です。
商標登録しても商標権が消滅することがある
問題の裁判は、いまをさかのぼること5年前の2012年、米国人男性が、「グーグル」は普通名称化したために商標権は消滅していると主張して、商標権取り消しを求めて行われていたものです。
これにはちょっと説明が必要でしょう。
グーグルは、同社の社名であると同時に、アメリカ国内では、インターネットで検索することを表す動詞として一般的に使われています。
日本で言うと、「ググる」と同じ使い方です。
ややこしいのは、日本の場合は、「グーグル」という商標を崩して「ググる」という使い方をしているため、社名・ブランド名としての「グーグル」と、動詞としての「ググる」は明確に区別されます。
しかし、アメリカでは、いずれも「Google」と表記し、読みも同じなので両社は区別されません。
特定企業・個人に商標権が帰属する固有の登録商標であっても、広く一般的な名称として普及すると「普通名称化した」と判断され、商標権が消滅することがあります。
アメリカではかつて、オーチス社の登録商標だった「エスカレーター」の商標が普及して一般名称化し、同社が商標権を自ら手放したことなどが知られています。
日本でも、「うどんすき」、「正露丸」など、かつて商標登録されていたものが一般名称化して商標権が消滅したケースがあります。
今回のケースでも、「グーグル」は一般名称化したのかどうかが問われましたが、同様の検索サービスであるマイクロソフトやヤフーは、検索を表す動詞として「Google」という単語を使っていないなどとして、「一般名称していない」と主張。
今回の裁判では、一応、グーグルの主張が認められた形です。
グーグルの商標権は将来的に守られるのか
“一応”と言ったのは理由があります。
実はこの問題はいま始まったことではなく、グーグルでは、検索を表す動詞として「グーグル」が使われ始めた10年前から、「検索を表す動詞として『グーグル』を使わないでほしい」と呼び掛けていました。
まさに、今回のような問題が起こることを危惧していたわけで、悪い予感が当たってしまったことになります。
同社としては世界一のITブランドになった社名を守りたいのは当然でしょう。
けれど、慣用句というのは人口に膾炙するものなので、とめようと思ってもとめられるものではありません。
実際、グーグルでは、検索を表す動詞として「グーグル」を使わないよう、各方面に要請していましたが、その努力は実っていないのが実情です。
このまま、グーグルが、同社の商標を表す呼称ではない形で使われ続けた場合、いずれ一般名称化する事態を避けられない可能性もあるということです。
参考:
日本経済新聞 「グーグル」と「ググる」は別物 米高裁が商標権認める
CNET Japan グーグル、「ググる」の使用に難色