中国や台湾で日本の地域名や地域ブランド名を現地の企業が勝手に商標登録してしまうケースが相次いでいます。
商標登録が通ってしまうと、日本企業や地域ブランドの現地でのビジネスに大きなリスク要因となります。
個別事例ごとに対応してきましたが、被害が後を絶たないことから、特許庁は対策強化に乗り出しました。
中台で日本の地名を勝手に商標登録
第三者に権利があるはずの商標を、本人に先んじて出願して既成事実化させようとすることを、冒認出願と言います。
本来の商標権者の権利を妨害することで、高額なライセンス料や商標の買い取り料を要求したり、損害賠償を請求したりするのが狙いです。
当然、どの国の商標でもこのような不当な利用目的での商標登録を認めていません。
中国でも台湾でも外国の地名を商標にすることは基本的にできないのです。
ところが、商標登録できないのは一般に広く知られている地名という条件になっているため、中国や台湾国内では知名度がやや低い地域名が狙われているようです。
商標登録が通ってしまうと、日本の地域ブランドを輸出しようとしたときや、日本企業が現地で地域名を冠した商品を販売しようとしたときに、大きな障害になります。
現地の商標局に対して、登録された商標の不当性を訴え、商標登録を取り消すことも不可能ではありませんが、労力とコストがかかり、結果的に訴えが認められないケースもあります。
地域名を勝手に登録された自治体では対応に頭を悩ませているのが現状です。
このような事態に特許庁でも対策に乗り出しました。
地域ブランドにとっては大きなマイナス
中国や台湾で相次ぐ冒認出願に特許庁でも対策強化に乗り出しました。
まず行ったのは、冒認出願の対策マニュアルの作成と配布です。
すでに過去に制作したものは改定し、新たなマニュアルを作成するなどして、すべての都道府県、政令指定都市、農業関連団体に配布しました。
作成したのは以下の3種類のマニュアルです。
1.商標検索マニュアル
中国・台湾における商標の出願・登録状況についての調査方法をまとめたものです。
中国、台湾の商標局のホームページへのアクセス方法、商標の検索方法などについて解説しています。
2.冒認出願対策リーフレット
中国、台湾での商標登録の方法や不当に商標登録された商標の登録取消請求などの手続の概要をわかりやすく解説したものです。
冒認出願を予防するために、自治体自ら先に地域名の商標を現地で登録することが有効です。
このことから、商標出願の手続きをまとめています。
3.商標冒認出願対策マニュアル
最近の冒認出願の実例をもとに、商標登録されてしまう前の事前対策、すでに商標登録されてしまった後の事後処理について、手続の流れを紹介したものです。
なお、これらのマニュアルは、ジェトロ北京事務所、ならびに、特許庁のウェブサイトからも全文を入手できます。
また、特許庁の委託事業により、ジェトロ北京事務所および交流協会台北事務所に冒認商標問題特別相談窓口を設置しました。
窓口では、中国・台湾の商標制度の解説、法的手続きについて、現地法に詳しい専門家が対面もしくは、電話やメールによる個別相談に対応しています。