無断で商標を使用したとして東京都内のボクシングジム経営者が藤沢市に権利侵害を申し立ました。
市は事前に調査をせず、登録商標であることを知らずに使ってしまったようです。
市の行った事業について起こったトラブルです。
当然、営利目的の事業ではありません。
それでも商標の侵害は成り立つのでしょうか。
知らなかったでは済まない。賠償金を支払いへ
藤沢市が知らずに使ってしまった商標はボクササイズです。
市内の公民館などでボクシングを取り入れたエクササイズの体験教室を開催した際、ボクササイズの名称をチラシや市の広報で使っていました。
市では2006年ごろから商標を使用していましたが、2015年末に商標権を持つジム経営者から指摘されて使用を中止していました。
その上で、損害賠償として20万円をジム経営者に支払うことになりました。
市の行った事業なので、営利目的ではありません。
それでも商標権の侵害は成り立ちます。
実は、商標の無断使用は藤沢市が初めてではなく、県内の他の自治体も過去に同様の侵害が発覚し、同等額の賠償金を支払っていた経緯があるのです。
今回もこうした前例を踏襲したものです。
参考:知らずに「ボクササイズ」商標権侵害 藤沢市が都内ジムに20万円賠償
1987年に商標を登録済み
ボクササイズはプロボクサーのトレーニングを応用した運動法として、約25年前、都内でジムを経営する三迫正廣氏が考案しました。
三迫氏のジムで指導を受けていた選手の奥さんが、夫の身体が見る見る引き締まっていくのを目の当たりにして、自分もトレーニングを受けたいと申し出たのがきっかけです。
プロのトレーニングメニューから選手向けの要素を取り除き、ダイエット目的の女性でも安全に続けられ効果的なメソッドとして開発したのが現在のボクササイズのルーツになりました。
ボクササイズのネーミングを考案したのも三迫正廣氏で、ジョギング中に思い浮かんだということです。
その後、ジムでは正式にボクササイズを商標として出願、1987年10月に商標登録されています。
参考:渋谷三迫ボクシングジム
現在ではボクササイズは日本全国に広まり、愛好者は全国で2500人にのぼるということです。
すでに世の中に知られるようになって20年以上、用語としてすっかり定着したために、一般名称と勘違いしている人が多いようです。
藤沢市の担当者も「まさか商標登録されているとは思わなかった」と言っていました。
商標を使う前に調べるのが事前の策
商標登録されている商標であっても、一般名称になるまで定着すると商標権の効力がなくなることもありますが、少なくともボクササイズについては、権利が存続しているようです。
商標登録されているとは知らず、一般名称と思い込んで商標を無断使用してしまっているケースは他にもたくさんあると考えられます。
実際に、商標だと知らずに使っていたら、ある日突然、商標権者から権利侵害を指摘する文書が届いて慌てた、という話は枚挙にいとまがありません。
知らなかったでは済まないのが商標権の特徴です。
侵害するつもりはなくても、使ってしまったら後の祭りなのです。
商標を使う前に、誰かが商標登録していないか、調べてみるのが次善の策と言えるでしょう。
併せて読もう:
[POST_LINK id=”2722″]