特許庁に平成29年度、大型新人が入庁したようです。
その名は「エイ・アイ君」。
特許庁が行う審査業務などに、人工知能(AI)が導入されることになりました。
これまでの実証実験を繰り返してきましたが、今年度からはいよいよ実際の業務で運用を試す実証事業に着手します。
特許庁に出願される特許、実用新案、意匠、商標の件数は年間50万件を超え、商標登録出願だけでも10万件にのぼり、審査などの作業が膨大に増えています。
導入されれば、作業の大幅な効率化による審査期間の短縮、手数料の値下げなどが期待できます。
まずは6つの業務で実証
特許庁が平成29年4月にまとめた「平成28年度の取組と今後のアクションプラン」によれば、AI導入に先立ち、特許庁における業務の棚卸しを行い、すべての事務作業を892系統に分類。外部の専門家(産業総合研究所等)の支援を受け、AIの活用によって業務効率化を図れる可能性が高い作業を15分野・20業務に絞り込みました。
このうち、平成29年度内に、絞り込んだ20業務のうち、6業務で実証事業に取り組む計画です。
AIを活用する作業は、たとえば、特許では、出願されたものと重複する技術が過去に存在したかを調べる作業や、技術の内容を分析して分類する作業を行い、商標では、先願調査において、画像認識技術を使って登録商標と出願商標を突き合わせる作業も行うことになります。
実証事業により、業務の精度や費用対効果などを検証し、来年度以降、残る候補業務についても順次実証を進める予定です。
実証実験では人間と同じ水準に
特許庁ではこれまでも、AIの実証実験を繰り返してきました。
昨年には、NTTデータと協力して、同庁への問合せに約30万件に対する回答案をAIに作成させ実証実験を実施していました。
この結果、問い合わせの多い内容順に上位5位までについて、人間が答えた場合と同じ制度の高い解答を提示したということです。
こうした結果を受けて、本格的なAIの運用についての取り組みをはじめたものです。
審査期間の半減目指す
産業財産権の出願件数は年々増加の一途とたどっており、特許庁でも審査官の育成や審査の合理化などの対策を進めていますが、出願件数の増加に追い付かないのが現状です。
商標登録の場合で、出願から登録までの期間は最短でも4カ月、平均すると6カ月から8カ月、審査のやり直しや異議申し立てが入ると1年、2年かかってしまうこともざら。
スピードが命のビジネスの世界で、審査待ちのために半年、1年といったタームでビジネスが停滞してしまうのは非常にロスが大きい。
AIがそんな悩みを解決してくれるかもしれません。
特許庁ではAIの導入により、2023年度までに審査期間を現在の約半分に短縮する目標を設定しています。
参考:
日本経済新聞 特許や商標審査にAI活用 特許庁、分類や重複調査
日刊工業新聞 特許庁、来年度にAI活用した審査実証-権利化まで期間半減14カ月に
特許庁 平成28年度 人工知能技術を活用した特許行政事務の高度化・効率化実証的研究事業の公募結果について