商標の登録を代行できるのは弁理士と弁護士だけですが、中でも弁理士は、商標を含む産業財産権(商標のほかは特許、実用新案、意匠)についての法律事務を専門に行う法律家です。
そして、弁理士が開業する法人が弁理士事務所、特許事務所、特許業務法人です。
商標登録は自分で実施することもできますが、下記のように、メリットよりもデメリットの方が大きいと考えております。
- 商標に関する高度な知識が必要になる場合がある。
- 自分で登録をチャレンジした場合、本来であれば取得できるはずの商標の登録を逃す場合がある。
- 取得した商標の権利範囲が適切になり難い。
- 余計に時間がかる。
一方、商標登録を弁理士に依頼しても、さほど高額な費用がかかるわけではないので、コストや時間の面から、弁理士に頼むのが妥当と思われます。
では実際、弁理士費用はどれぐらいかかるのでしょうか。
弁理士費用も自由競争の時代
以前は、弁理士費用は日本弁理士会によって弁理士報酬・手数料の標準額が定められてり、どの事務所に頼んでも同じ料金でした。
しかし、平成13年1月6日の弁理士法改正により標準額は廃止されており、定価や基準価格は無くなりました。
いまはすべての業務において、事務所が自分たちの戦略や考え方にしたがって、自由に手数料を設定できるようになっています。
このため、現在では、各事務所によって価格体系がまちまちになりました。
たとえば、主な報酬体系についても、3通りがあります。
弁理士費用の報酬体系:
- 固定報酬制:依頼案件の作業量にかかわらず、1案件当りの報酬額を固定する報酬体系。
- 従量制:依頼案件の作業量、行程数、難易度などによって報酬が変わる報酬体系。
- タイムチャージ制:依頼案件の処理に費やした時間にしたがって課金する報酬体系。
現在は従量制を採用している事務所が多いようです。
また、報酬の種類も以下の3種類があります。
弁理士報酬の種類:
- 手数料:弁理士が行う法律事務の処理にかかる費用。
- 謝金:弁理士の働きにより、案件が依頼者の望む結果になったときに発生する報酬。
- 実費:依頼案件を進める上でかかる交通費、コピー代などの事務費。
弁理士に業務を依頼する時は、上記の内少なくとも1つの費用がかかります。
商標登録を出願する場合の費用の種類
弁理士に法律事務を依頼するとき、どのような場面で費用がかかるのでしょうか。
代行費用は特許、実用新案、意匠、商標でそれぞれ異なりますので、ここでは商標に関する出願と登録についてのみ説明します。
1.調査・相談
商標を出願する前の相談、事前調査です。
相談料の相場は30分5000円といったところ。
現在は相談料をとらず出願料に含める、あるいは、初回のみ無料、電話相談は無料としているところが多いようです。
次に調査業務は、出願したときに成功の可能性があるかどうかを調査する場合、簡易調査で済ます場合と、より詳しく調査する場合があります。
簡易調査の場合、相場は1~2万円です。
ただし最近は、簡易調査は無料に設定するところが増えています。
2.出願時
出願は商標登録の事務処理の中でも主要な部分を占め、作業量も多く、また、弁理士の腕が問われる部分でもあるので、比較的に高額であり、弁理士の考え方により金額設定も幅広くなっています。
厳密に言うと、指定する区分数(商標権を設定する範囲のこと)によって料金はまったく変わってしまうのですが、ここでは単純に、1商標1区分指定の場合を例に記載します。
なお金額は、日本弁理士協会が平成15年に行ったアンケート調査時のもの(以下すべて同じ)です。
また、費用には特許庁に払う印紙代(手数料)は含まれていません。
最低3万5000円、平均6万6989円、最高14万円。
ただし同じ調査を18年に行った際には、平均額は約70000円に上昇しております。
弁理士報酬も、値上がり傾向にあるようです。
3.中間時の費用
商標出願から登録まで、スムーズに審査が進む場合のみではありません。
審査中の商標に対して、このままでは商標登録できないという途中結果(拒絶通知)が発行される場合があります。
この場合、補正書の提出、あるいは意見書の提出といった処理が必要です。
補正書の手数料は以下の通りです(1区分の場合)。
最低0円、平均4万0579円、最高9万円
意見書の手数料は以下の通りです(同)。
最低0円、平均4万7907円、最高20万円
補正書、意見書とも0円でやっている事務所があるのは、出願時や東特時の報酬の中に料金を一括で含めているからだと考えられます。
4.登録時の費用
登録時には謝金として費用が発生します。
商標登録は必ず登録できるわけではなく、審査で落とされることもあります(拒絶査定といいます)。
このため、商標登録が成功した場合にのみ支払われる報酬があります。いわば成功報酬です。
金額は以下の通りです(1商標1区分の場合)。
最低0円、平均4万5409円、最高値9万円。
これも0円があるのは、出願時に一括で料金設定しているからだと思われます。
登録時の費用は、登録料を納めるための手数料、理士・特許事務所に対する成功謝金です。
5.その他の費用
そのほか、商標登録関係だけで以下のような業務を弁理士は行っています。
- 商標に関する存続期間更新登録申請
- 商標に関する付与後異議申立事件の対応
- 商標に関する取消理由通知に対する意見書作成
- 商標に関する拒絶査定審判への対応
- 商標に関する無効審判
- 商標に関する取消審判
- 商標に関する口頭鑑定
- 商標に関する鑑定
- 商標出願における早期審査の事情説明書作成
また商標登録関係以外の業務として以下のような業務を行います。
- 顧問業務
- 刊行物等提出書
- 審査官面接
- 産業財産権活用のコンサルティング業務