登録した商標が第三者に侵害されたときの対処法(1)基礎編

せっかく商標登録した商標の利得をしっかり行使し、ビジネスをより優位に進めていくためには、登録した商標の権利を守ることが重要です。

つまり、第三者が勝手に使用しないよう管理し、もし商標権の侵害が発覚したらそれに対処することが必要になってきます。

では、具体的に、第三者に商標を侵害された場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

目次

侵害行為を受けたときの5つの対処法

登録した商標を第三者が勝手に使用することを商標権の権侵害行為と言います。

もし、自分が登録した商標の侵害行為を見つけたら、商標権者は次のことを相手に求めることができます。

  1. 商標の使用の差止めを求める
  2. 損害賠償を請求する
  3. 不当利得の返還を請求する
  4. 信用回復のための措置等を求める
  5. 刑事責任の追求

具体的に、⑤つの対処法について見ていきましょう。

1.差止請求

第三者が商標を勝手に使っているとき、まずはその使用をやめてもらう必要があります。

そこで、使用を差止める請求をします。

具体的には、次の2通りがあります。

  1. 商標を勝手に使わないよう使用停止を請求し、かつ、侵害行為に使用した商品パッケージやパンフレット、看板広告などのたぐいを処分すること。
  2. 商標を勝手に使おうとしていたときには、その行為をやめさせ、かつ、侵害行為に使用されそうなパッケージやパンフレット、看板広告のたぐいを処分すること。

ここでお分かりのように、実際に商標の侵害行為をしている場合だけでなく、準備している段階でやめさせられることがわかります。

なお、差止請求の際に、故意であるか過失であるかは問いません。

2. 損害賠償請求

商標を勝手に使い、模倣品を製造、販売していたときには、商標権の侵害によって被った損害を相手に賠償請求できます。

ただし、損害賠償を請求するためには、損害の発生を立証し、かつ、勝手に商標を使って上げた利益や、商標権者である自分が被った損害額を算定しなければなりません。

すると膨大な調査コストがかかることになり、現実的な困難がともないます。

そこで、損害額については法律で以下の通り3通りの算定規定が設けられています。

1. 商標権を侵害している商品を譲渡した場合

商標権を侵害している商品を他の第三者に譲り渡した場合の想定です。

このケースでは、侵害者は利益を得ていません。

侵害行為によって利益を得たのは別の第三者ですが、侵害行為を行った者に賠償責任が生じます。

この場合、譲渡した商品の数量を元に、侵害行為がなければ商標権者が販売できたはずの数量×利益額を、商標権者が受けた損害の額とするものです。

ただし、侵害行為がなければ販売できたはずの数量をどういう基準で算定については、商標権者が立証責任を追っており、侵害者に異論がある場合は交渉の余地を残してしまう場合があります。

2. 侵害者が侵害行為によって利益を得た場合

侵害者が侵害の行為により得た利益額を商標権者が受けた損害としてそのまま請求できます。

3.商標権者が受けた侵害をライセンス料として換算する

(1)(2)の請求が認められなかった場合の予備的な請求として主張する方法です。

商標権者が受けた損害を、ライセンス料に換算し、その相当額を賠償額とすることができます。

勝手に商標を使っていた場合でも、お互いが合意の上でライセンス契約したことによって商標権者が被るデメリットと同じ状況が生まれるという想定のもと、それに見合う料金としてライセンス料を妥当するという考え方です。

ただし、商標を使ったことが利益に寄与しなかったことを侵害者が証明してしまうと、損害が成立していないと判断される場合があります。

3.不当利得返還請求

不当に得た利得の返還請求は民法に規定さています。

法律上の権利がないのにもかかわらず、本来の権利を持っている人が得られたはずの利益を不正に取得することを、不当利得と言います。

不当利得を得た者に対して、本来の権利者は、自身が得られたはずの利得であると主張し、その返還を要求することができます。

4.信用回復措置請求

商標を勝手に使われることによる被害は、商標を持っている自分が本来得られたはずの利益を横取りされてしまうことばかりではありません。

場合によっては、粗悪品をばらまかれたり、不当に安い値段で売られたりすることによって、商標のイメージが悪くなってしまうこともあります。

こうした信用棄損に対しても商標権の侵害によって被った損害であると主張し、信用回復のための処置を要求することができます。

具体的には、謝罪広告の掲載などを求めることができます。

5.刑事責任の追及

商標法は商法の一種ですが、商標権の侵害には刑事罰もあり、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金が科せられます。

商標権を侵害されたときには警察に刑事告訴し、刑事責任を追及することも可能です。

ところで、商標権の侵害は、通常、会社の業務の一環として行うものです。

すると、罰金刑はいいとして、法人である会社に懲役刑を科すことは物理的に不可能です。

そこで、業務の一環として侵害行為があった場合、実行行為者である経営者や営業担当者の処罰に加えて、法人にも罰金刑を科すことができます。これを両罰規定と言います。

商標権の侵害は損害賠償を受けるだけではなく、刑事罰まで課されます。

それだけ、非常に重い違反行為と言えます。

以上が、商標権の侵害行為に対する対処法ですが、具体的に商標の使用を差し止め、場合によっては裁判に訴えるまでのだんどりについても詳しい解説が必要です。

そこで、より詳しいだんどりについては、[POST_LINK id=”500″]で詳しく解説します。

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