商標登録をした商標は、自分で使うだけでなく一定の条件で他人に貸し出すこともできます。
これを商標のライセンスと言います。
自分自身の商標権を失うことなく、第三者に貸し出すことでブランド力の向上を図るだけではなく、ライセンス収入を得ることもできます。
では商標のライセンスとはより具体的にどのようなもので、実際の運用はどのようすればよいか、下記に解説します。
商標権のライセンスとは
商標登録を行うと、独占・排他的にその登録商標を使用する権利を得ます。
その際、自分で使うだけではなく、他人に使わせることもできます。
ライセンスビジネスは欧米のファッションブランドメーカーでよく使われる手法です。
元はファッションブランドなのに、ファッションとはあまり関係のなさそうな日用品やスポーツ用品にまでブランドのロゴが使用されたりしていることが多々あります。
この場合、ファッションブランドメーカーが作っているわけではなく、商標を貸しているだけということが多くあります。
あるいは、ディズニーやサンリオなど強力なキャラクターを持っている会社も、自分たちでTシャツや玩具を作るより、服飾メーカーや玩具メーカーにキャラクターの商標権を貸してライセンス収入を得るビシネスを志向する傾向があります。
このように、強力な商標を持っていると、ライセンスビジネスが成り立つのです。
商標の貸し出しを行う2通りの方法
商標の貸し出しの際に行使される権利は、専用使用権と通常使用権の2種類です。
専用使用権はもともとの商標権者とほぼ同様の権利が認められるとても強い権利です。
実施するには、両者で合意するだけではなく、特許庁に申請する必要があります。
専用使用権が認められると、独占的な使用権が発生し、設定後は本来の商標権者自身さえ商標を使えなくなります。
つまり、専用使用権を与えられるのは、1者のみです。
これに対して、通常使用権は商標権者と使用者の間で合意があればよく、特許庁への申請は不要です。
ただし、商標権者から使っていいという許可を受けただけなので、使用者に商標権を行使することはできません。
通常使用権は制限なく貸し出せるので、複数の人が使うことになります。
いわば「のれん分け」のようなものと言えるでしょう。
ライセンスビジネスはハードルが高い
商標を貸し出すだけで、貸した相手が一生懸命ビジネスして商標を広めてくれる上に、ライセンス収入まで得られるわけですから、良いビジネスのように思えます。
しかし、現実はそう簡単ではありません。
ライセンスビジネスに慣れている企業であれば良いかもしれませんが、一般的な企業がライセンスビジネスに手を出すのはハードルが高いと言われています。
なぜなら、貸し出した商標の管理が大変だからです。
貸出先には、貸し出した商標のブランドイメージを守ってもらう必要があります。
もし、商標のブランド価値を傷つけてしまうと、商標権者はもちろん、同じ商標を借りてビジネスをしている別の事業者にも迷惑がかかります。
したがって、ブランドの価値、イメージを守って商標を使うように見張っていなければいけないし、もし逸脱する行為があったときには使用の停止や利用権の撤回などの処置を講ずることも必要です。
とはいえ、相手も商標を使ってビジネスをしているので、急に取り上げられると困ります。
交渉がこじれれば、訴訟に発展することもあるわけです。
ライセンスビジネスはおいしい商売のように見えて、意外に面倒なビジネスなのです。