この場合、すぐにあきらめてしまうのは早計です。
まったく同じ商標が先に登録されていても、商標登録可能な場合は決して少なくありません。
ポイントは以下の5つです。
それぞれ見ていきましょう。
1.指定区分は何か
商標登録する際には、使う商標そのものと、その商標を使う範囲をセットで申請する必要があります。
使う範囲とは、どのような商品・サービスの分野で使用する商標なのかを特定することで、詳しくは商標を登録するには分類を決めるで解説しています。
ここでは簡単に言うと、商標登録するときに商標法で定める45分類から複数選んで区分を指定することになっています。
たとえば、指定区分を化粧品として登録すると、化粧品類としてのみ商標が守られることになります。
逆に言えば、指定区分の範囲外は保護されません。
つまり、まったく同じ商法であっても、指定区分が異なれば商標登録は可能なのです。
同じ商標、似ている商標が先に登録されていたら、まずは、指定区分がどうなっているかを見てみましょう。
2.使用実態があるか
調べてみた結果、自分が商標を使おうと思っていた商品・サービスと被ることがわかったとします。
まだあきらめるのは早いです。
使用実態があるかどうかを見てみましょう。
実際のビジネスで使用していることによって初めて商標として保護の対象になります。
調べてみた結果、使用実態がない場合は、不使用取消審判請求といって、「この商標は使用実態がないので商標登録を取り消してほしい」という訴えを起こすことができます。
商標登録はすでに使用している商標だけではなく、これから使う予定の段階でも登録可能です。
したがって、商標登録したけれど実際には使わなかったということもあります。
また、過去には使っていたけれど、現在では商品の販売を中止しており、すでに商標を使っていないということもありえます。
ポイントになるのは未使用期間が3年間に達するかどうかです。
過去3年間、使用実態がなければ不使用取消審判を請求できるのです。
不使用取消審判が認められたら、改めて自分の商標として登録を目指すわけです。
3.不正な申請ではないか
商標登録の中には、使用する予定も意志もないのに他人の商標の先取りとなるような不正な出願も含まれます。
本来の商標権者の商標登録を邪魔し、高額なライセンス料や買い取り交渉を持ちかけることが目的です。
このような不正な商標出願は、実際に使う計画はないので、本来の業務とは異なる商品分野の出願であるとか、手数料を払っていないなど手続きに問題があり、出願の却下処分になるケースがほとんどです。
しかし、申請そのものに不備がなければ、商標登録されないまでも特許庁としては出願中の案件として処理せざるを得ません。
特許庁でも問題視しており、このような不正な出願によって、本来の商標権者が商標登録をあきらめることのないよう、他人が先に出願していてもあきらめないでという警告を公式サイト上で発信しているほどです。
参考:特許庁:自らの商標を他人に商標登録出願されている皆様へ(ご注意)
不正な出願であった場合、黙って待っていればいずれ取り消されますので、下手に交渉などしないことが大切です。
それまで待てない場合、特許庁に出願の無効を訴えることも可能です。
4.本当に似ているか
調査してみた結果、自分が登録しようとしている商標と商品の分類が同じで、ちゃんと使用実態もあり、不正出願でもない場合はどうすればよいでしょう。
まったく同じ商標の場合は断念するしかなさそうですが、似ているというレベルならまだ可能性はあります。
商標ではまったく同じ商標だけではなく似ている商標についても保護されることになっています。
したがって、特許庁の審査で先に出願されている商標と類似していると判断されれば登録は不可能。問題は、似ているという判断がどのようになされるかです。
基本的に類似の判断は、次の3つの観点から行われます。
- 呼称:読んだときの音
- 外観:見た目
- 観念:商標から連想される事物
いずれの場合もポイントになるのは見た人が混同してしまうようなまぎらわしい商標かどうかです。
類似の判断は経験と知識を要しますので、実際には弁理士などの専門家に判定を依頼するのがベストでしょう。
5.買い取れないか
上記の1~4を検討した結果、やはりどうしても第三者に商標権があるようなら、最後の手段、使用許諾を得るか商標権を買い取ることになります。
使用許諾の場合は費用も安く、交渉も容易ですが、商標権は相手が持ったままです。
相手の気が変われば商標が使えなくなる可能性も残されており、安心して商標を使うにはやはり買い取るのが無難です。
商標権の買い取り価格はケースによって大きく変わります。使用歴が長く大きなビジネスになっていれば当然、費用はかさみますし、相手が手放さないかもしれません。
一方、使用実態もさほどなく、手放してもいいと相手が考えていた場合ならスムースに交渉を運ぶことができるでしょう。
交渉は自分でもできますが、弁理士など専門家に頼むのが一般的です。
交渉がまとまったら特許庁に移転登録申請の手続を行うことで、商標登録を自分の名義にすることができます。