商標登録の手続きの最後は特許庁内で商標登録原簿を作成することです。
最後の手続きを終えると出願人のもとに商標登録証が送られ、これによりめでたくすべての作業が完了し、商標登録が成就するわけです。
ところで、商標登録原簿と商標登録証にはそれぞれどのような意味があり、どのような働きをしているのでしょうか。
登録証は記念品、法的効力はない
まず商標登録証から見てみましょう。
商標登録の手続きがすべて完了すると文字通り商標登録が済んだ証として特許庁から出願人に送られてきます。
下の画像は見本です。
参考:商標登録証
登録番号、登録された商標、使用している区分(商標権の及ぶ範囲)、商標権者(商標の権利を持っている人)の氏名(法人の場合は社名)と住所、出願番号、出願日、登録日などの情報が記載されています。
商標権者が複数人数いる場合は全員の住所に届けられます。
菊の御紋に鳳凰の飾り枠までついたいかにも権威のありそうな登録証ですが、実は法的効力はありません。
仮に、商標をめぐる何かの係争になり、商標権を持っている証拠を提出する必要が生じた場合、商標登録証を提出しても証明にならないということです。
商標登録証は商標登録をしたときにもらえる記念品のようなものです。
とはいえ、それはそれで意味があり、額に入れて飾っておけば事務所を訪れた人に登録商標をアピールできます。
商標を登録した際は、商標権を持つ商標であることをできるだけ周知する努力が権利者に求められることになりますが、商標登録証はそのための効果的なツールになるわけです。
なお、商標登録証をもしなくしてしまっても大丈夫。
特許庁に申請すれば再発行してくれます。
地味だが法的効力がある商標登録原簿
商標登録証に法的効力がないなら、どうやって商標の権利を持っていることを証明したらいいのでしょうか。
商標を登録していることを法的に証明できるもの、それこそ商標登録原簿なのです。
特許庁の審査官による商標登録の審査にパスし、登録手数料を支払うと庁内では、新たな商標の情報をデータベースに記録します。
このデータベースが原簿です。
商標権を持っている証拠を提出する必要が生じた場合に持っていくのはこの商標登録原簿の写しということになります。
下の画像はその見本です。
参考:商標登録原簿
商標登録原簿には、登録番号、登録された商標、登録料、甲区(商標権者)などが記載されます。
いかにも地味な行政文書ですが、法的に重要なのはこの書類なのです。
以後、区分の変更や更新など権利の変動があった場合にはその都度新たな情報が書き加えられ、商標権が存続する限り原簿は保管されることになります。
商標登録原簿以外の書類
特許庁には商標原簿には商標登録原簿の他に、商標関係拒絶審決再審請求原簿と商標信託原簿が保管されています。
通常の商標登録の手続きの中ではまずお目にかかることはないレアな文書ですが、一応、触れておきましょう。
商標関係拒絶審決再審請求原簿とは、拒絶査定不服審判の再審をする場合に備えて保管してある書類です。
出願された商標に対して商標登録にふさわしくない商標だと特許庁が判定することを拒絶査定と言います。
拒絶査定に対して出願人が不服を申し立てると拒絶査定不服審判というプロセスに進みますが、商標関係拒絶審決再審請求原簿は、不服審判に納得いかなった出願人がさらに再審を要求するときに必要になる書類ということです。
次に、商標信託原簿とは、商標権に対して信託法に基づく信託が申請された場合に必要になる書類です。
商標信託とは、商標のライセンス管理を第三者の専門家に依頼するときなどに利用する方法。信託を行う際、特許庁に申請する必要があり、そのときに使われる書類ということです。