商標登録を実際に行う際には弁理士事務所や特許事務所に依頼するのが一般的です。
従来は商標登録の手続きを行う際にいちいち委任状が必要になりましたが、現在では一部の手続きのみに限られています。
委任状が必要になる場面とはどのようなときでしょうか。
通常の商標登録の手続きに委任状は不要
自治体に住民票の交付してもらうときも、他人に頼むとしたら委任状が必要になるように、一般的に法律関係の事務において代理人に手続きを依頼する場合、委任状が求められるものです。
商標登録においても、弁理士などに手続きを依頼する際、いちいち委任状の提出を求められていた時代がありました。
それではあまりに面倒だという声が次第に大きくなりました。
実際の手続きにおいては、委任状を必要とする場面はごく限られるからです。
そこで、現在は委任状が必要になるケースは下記のような場合に限られています。
- 出願の放棄や取下げなど出願人にとって不利益となりえる手続
- 代理人の選任・変更など、出願人の意思に反して勝手に手続が行われる可能性がある手続き
簡単に言うと、通常の商標登録手続きにおいては、委任状が必要になる場面はほとんどないと言っていいでしょう。
包括委任状は信頼のおける特許事務所限定で
商標登録の手続きを弁理士に依頼したら、包括委任状の提出を要求されることが稀にあるようです。
包括委任状とは、特許庁に対して行う各種手続きにおいて、代理人にすべての手続きを全面的に委任したことを証明する文書のことです。
商標登録の手続きにおいて委任状が必要になる場面はさほど多くありませんが、特許、実用新案、意匠などの手続きを含めれば、さすがに委任状が必要になる事態も度々発生します。
たとえば、大手メーカーなど商品やブランドがたくさんあって、商標登録だけではなく、特許関係の手続きなども多い場合、いちいち委任状を取り交わすのは面倒。特許事務所にすべてお任せでやってもらえれば便利です。
商標登録を含む知財関係の法務事務が多岐に渡る場合で、特定の特許事務所と継続的、定期的に手続きを依頼する場合などを想定して作られた制度です。
つまり、たくさんの知財関係の法務事務を必要としない場合でない限り、包括委任状の提出は不要だと考えられます。
先述した通り、出願人にとって不利益になりえる手続きや、勝手に手続きされると困るような場合に委任状が必要になるわけですから、つまり、包括委任状を取り交わすということは、特許事務所と相当な信頼関係が求められるわけです。
特許事務所としては、委任状を悪用するつもりがあるわけではなく、仮にそのような場面になったときでも手続きをスムースに行えるようにという予防的な処置とも考えられますが、提出を求められたら少し慎重に考えましょう。
言われるまま包括委任状を提出してしまったという場合も大丈夫。
特許庁に対して包括委任状取下書を提出することで、包括委任状を取り下げることができます。
包括委任状を提出することによって合理的に手続きが進められるケースもあるでしょう。
その際、心配だったら、包括委任状援用制限届を提出することによって、包括委任状の効力を一定の事案に制限することができます。