公益性に反するものは商標登録できない

商標登録を出願しようとしても、認められない、あるいは、認められにくい商標があります。

商標法では、出願しても商標登録できないものとして、以下の3つを定めています。

  1. 他人の商品・役務と区別できないもの
  2. 公共機関の標章と紛らわしいなど公益性に反するもの
  3. 先に他人が登録商標しているもの、未登録でも著名商標と紛らわしいもの

今回は、2.公共機関の標章と紛らわしいなど公益性に反するものについて解説します。

目次

お墨付きを得たように装うことを防ぐ

国旗や国際機関のマークを模したものなどを真似ることによって、あたかも権威的な機関からのお墨付きを得たように装う商標登録を禁止するための項目です。

具体的に、公共機関の標章と紛らわしいものとしては以下のものがあります。

  1. 菊花紋章、勲章、国旗そのものまたは類似の商標
  2. 国際機関の紋章、標章で経済産業大臣が指定するもの
  3. 国、地方公共団体など表示する著名な標章または類似する商標
  4. 公序良俗を害するおそれがある商標
  5. 商品や役務の質に誤認を生じさせるおそれのある商標
  6. その他

それぞれについて説明しましょう。

菊花紋章や勲章、国旗など

菊花紋章が禁止されているのは、日本では歴史上、菊花紋章が高貴な身分の証として用いられてきたためです。

現在でも皇室の紋章、警察のマークなどに使われます。

したがって、菊花紋章を真似ることで、あたかもそうした権威的機関からお墨付きを得たように誤認される恐れがあります。

とはいえ、菊は日本人にとってポピュラーは花です。

まったく使えないわけではなく、要するに、菊の御門と混同しないことが重要です。

実際は、花弁の数が12以上24以下のものなどの細かい規定があります。

勲章、日本および外国の国旗、あるいはこれに似せでた商標も同様の理由で商標登録できません。

国際機関の紋章、標章で経済産業大臣が指定するもの

国連や赤十字などの国際機関、その下部組織、あるいは、活動のシンボルマークなどを商標として登録することはできません。

菊の紋章や国旗と同様、権威的な機関からのお墨付きを装うことを防止するのに加えて、公表的に活躍する機関の標章を個人が独占的に使用することを防ぐためです。

具体的には、国際機関や国際活動の名称、ロゴマーク・シンボルマークなど。

白地赤十字の形状だけで、国際的な人道支援団体である赤十字を連想されるため、これに類するものは商標登録できません

赤い三日月、おなじくライオンと太陽の造形も赤十字のシンボルマークとして使われるので、これに類するものも商標登録が認められません

国、地方公共団体など表示する標章

国や都道府県、市町村、あるいはそれらの関連団体は、それぞれシンボルマークを持っています。

公共機関が持っているマークなどの商標は、公共的な目的で作っているためあえて商標登録していない場合があります

これを悪用し、勝手に商標登録したり、個人が独占的に使うようなことはできません。

もちろん、国や自治体、団体などが自ら商標登録の出願した場合は、この規定によって出願が拒絶されることはありません。

公序良俗を害するおそれがある商標

権威的な機関のお墨付きを装うだけではなく、逆に他者の権威や尊厳を落としめたり、不快にさせたりする商標の登録も認められません。

たとえば、次のようなものが該当します。

  • 過激・卑わいな表現、差別的な表現、そのほか、他者に不快な印象を与えるような商標
  • 商標法以外の法律によって使用が禁止されている商標
  • 国際信義に反する商標

そのほか、音商標として、救急車のサイレンなど、一般的によく知られているものを商標登録することはできません。

外国の国歌を連想させるような音商標も登録できません。

商品や役務の質に誤認を生じさせる

商品や役務の質に誤認を生じさせるとは、商標から連想するイメージが実際の商品と相容れないケースのことです。

たとえば、お酒が入っていないのに、「○○酒」といった商標のついた商品は認められにくいでしょう。

実態が伴わないのに、外国の地名を使い、暗にその国名から連想させるイメージと混同させるような商標も不適切です。

イタリア料理を提供する店がイタリアとつく店名を商標登録するのは自然ですが、イタリアとはまったく産地も製造地も関係ないのにイタリアワインとするのは誤認を招く恐れがあると言えます。

そのほか、「○○博覧会」や、「○○大臣賞」など、存在しているかいないかにかかわらず、権威的な機関からの表彰を装うような商標、JISやJASなど規格品と混同されるような商標、特許、意匠登録など知的所有権を連想させるような商標も認められません

その他

そのほかとしては、主に2つのことが規定で禁止さています。

一つは、博覧会や品評会、政府ならびにこれに準ずる機関から、表彰や許可を得ているような誤認をさせる商標。

もう一つは、立体形状の商標で、包装の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる商標。

商品を普通に包装した形状が商標登録されてしまうと、誰も包装できなくなってしまうからです。

以上、出願しても商標登録できないものとして、他に2通りあります。

それぞれ、以下の記事を参考にしてください。

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