ご質問
商標制度は戦前からあると聞きました。
現在まで企業や個人が生み出した商標は膨大な数に上り、ものすごい量の商標登録がされていると思います。
このまま商標登録数が増え続けていくと、新しい商標を作っても過去に登録した商標と何かしら被ってしまう可能性が高くなるのではないでしょうか。
すると、将来的には、あらかたの商標は登録済になってしまって新たな商標登録ができないような事態になることはないのでしょうか。
ご回答
このまま商標登録件数が増えても新たな商標登録が不可能になることありません
商標法は戦前からあるのはその通りです。
より具体的に言うと、商標法が制定されたのは明治32年で、商標法の前身となる商標条例が制定されたのはさらにさかのぼって明治17年のことですから、現在から数えて130年以上前のことです。
この間、商標登録件数は一貫して増え続けています。
ちなみに、平成27年度(平成27年4月1日から平成28年3月末)の出願件数は15万5276件で、これは前年度に比べて19.7%増です。
出願に対する登録率も上がっているので登録総数が相乗してどんどん積みあがっているのは確かです。
加えて、権利の存続期間が決まっている特許や実用新案などと異なり、商標の場合は更新が可能であり、制度上は半永久的に登録しておくことができますので一方的に増え続けていくことになります。
しかし、結論を言うと、この調子で商標登録件数が増え続けたとしても、新たな商標登録が不可能になるような事態にはならないと考えられます。
登録できる商標が尽きることはないと言える3つの理由
商標登録件数が増えていけばいくほど、あとから出願する商標は先に登録された商標と何かしら似てしまい、登録しにくくなるという理屈は間違っていません。
実際、これから商標登録しようとしている商標に似通った商標がすでに登録されていないか調査をかけてみると、何かしら似ている要素のある商標に突き当たることはよくあります。
ですが、世の中のすべての商標が登録済みになってしまうような事態は考えられません。
これにはいろいろな理由があります。
第一に、商標登録は永久的なものではありません。
制度上は、更新を繰り返していくことにより、半永久的に登録状態を維持できます。
ただし、商標権を持っている人や会社は永遠に存在していませんので、関係者がいなくなって誰も更新しなくなると自動的に登録は取り消されます。
また、商標登録された商標でも、世の中に広まって一般的な名称として定着すると普通名称になったと判断され、商標権が消滅することもあります。
今のところ、商標登録件数は増え続けていく一方ですが、減る要素もあるということです。
第二に、商標として成り立つ表現方法が時代とともに増えています。
明治時代の商標は、ほとんどの場合、漢字か平仮名からなるもので、カタカナも少なかったようですが、戦後はここにアルファベットや英数字などが加わっています。
ロゴやイラストにしても、昔は簡単な手書きのデザインだったのが、現在ではコンピュータグラフィックを使った複雑な表現などに多様化しています。
さらに、文字やロゴ、平面的な絵柄など伝統的な商標だけではなく、近年は特定のフレーズやメロディを商標として登録できる音商標、色彩のみからなる商標、立体商標など、商標として登録できる対象も次々に増えていっています。
最後に、第三の理由として、オリジナルの商標として認められる商標が新たに誕生する余地は膨大にあるので、登録し尽くすまでには軽く見積もっても数百年や数千年はかかります。
つまり、現在の文明が終わるまでに商標登録できる商標がなくなってしまうようなことはないと言っていいでしょう。