近未来都市のようなビル街をヘリコプターやクルーザーで颯爽と駆け抜けたかと思うと、中東系のビジネスマンらしい人との談笑シーンや、謎の女性(漫画家の西原理恵子さんや、タレントの野村沙知代さん)が何の脈絡もなく登場。最後に、ヘリポートに降り立ったサングラス姿の中年男性が「Yes! 高須クリニック」というキャッチコピーを決めて終わり・・・
日本中の誰もが一度は見たことがあるテレビCMではないでしょうか。
美容外科業界をけん引する立場の高須クリニックのCMは、このドバイ編以外にも多くのバージョンが存在しますが、どれも意味不明な内容で、いったい何を訴えたいのかさっぱりわかりません。
いったいなぜこんなCMに大金を注ぎ込んでいるのだろうかと不思議になってしまう人もいるでしょう。
が、同医院の歴代のCMの中で一貫して使っている「Yes! 高須クリニック」というコピーの意味を知ると、「そういうことだったのか」と、思わず納得してしまうはずです。
コピーを考案したのは亡くなった前妻
高須クリニックの「Yes! 高須クリニック」というキャッチコピーをめぐっては、今年5月、ひと悶着ありました。
衆議院厚生委員会の席でのこと、当時の民進党大西議員が質問に立ち、エステサロンと系列美容整形医院による悪質な客引きの問題を取り上げた際、同社のCMを引き合いに出し、「みなさんご存知の『イエス○○クリニック』のような」などと、悪質なビジネスと同じくくりであるかのように語ったのです。
その上で、CM表現を「陳腐」と切ってすてました。
エステサロンと系列美容整形医院による悪質な客引きの問題と同医院はまったく無関係。加えて、CMを揶揄されたことに高須克弥院長が激怒。同議員と民進党を相手に1000万円の損害賠償を求めて提訴する事態にまで発展しました。
高須委員長の怒りは、単にCMをけなされたからだけではありません。
ご本人が明かしたことによると、「Yes! 高須クリニック」というキャッチコピーは、亡くなった前妻が考案したものだったのです。
高須克弥氏の最初の妻、シヅさんは、高須氏の大学時代の同級生で、一緒に高須クリニックを立ち上げ、黎明期にあった美容整形外科を現在の地位にまで押し上げた功労者。
高須院長は自らが実験台となって整形手術を実践し、メディアなどで実態をアピールしてきたことで知られていますが、実は、夫人のシヅさんも自らを実験台に、様々な美容医療を実践しています。
亡き夫人は、美容整形につきまといがちだったアンダーグラウンドなイメージを払拭するために院長と二人三脚で歩んだ同志のような存在といえるかもしれません。
そのシヅさんが残したキャッチコピーを「陳腐」と揶揄されたことが、許せなかったのです。
キャッチコピーに込められた意味
シヅ夫人が考案したという、キャッチコピー「Yes! 高須クリニック」は、これだけでは意味が通じません。
このコピーは、前詞「自分を楽しんでいますか?」と対になって初めて完成します。
どこか後ろ暗いものだった美容整形をメジャーにするため奮闘した高須夫妻、その根底にあったのは、「容姿のコンプレックスを克服し、若さや美しさを手に入れ、自分らしい人生を謳歌することは、誰しもに認められた権利である」という信念にあるといいます。
そうした美容整形に対する夫妻の考え方を表したのが、「自分を楽しんでますか?」の一言であり、その問いに答えを出せるのは、自分たちのクリニックであり、患者のどんな願いも受け止めるという覚悟を示したのが「Yes! 高須クリニック」というキャッチコピーだったのです。
そうしてみると、いっけんして意味不明なあのCMに込められた意味も何となく見えてくるのではないでしょうか。
美容整形によって自らの人生を切り開き、世界中を飛び回っていろいろなことに挑戦する高須院長自身の姿を見せることで、美容整形は恥ずかしいことではなく、人生を輝かせるものなのだと訴えているわけです。
参考:
高須クリニックCMギャラリー