商標法では、出願しても商標登録できないものとして、以下の3つを定めています。
- 他人の商品・役務と区別できないもの
- 公共機関の標章と紛らわしいなど公益性に反するもの
- 先に他人が登録商標しているもの、未登録でも著名商標と紛らわしいもの
今回は、3.先に他人が登録商標しているもの、未登録でも著名商標と紛らわしいものについて解説します。
他人の商標は登録できない
商標登録の目的は、他者と自分の商標を区別することです。
したがって、当然、第三者がすでに商標登録している商標は登録できません。
商標登録していなくても、明らかに他人に権利のある氏名や名称、それらと紛らわしい商標は登録できないことになっています。
具体的には、以下の6つを規定しています。
- 他人の氏名、名称または著名な芸名、略称
- 他人の周知商標と同じか類似の商標
- 他人の登録商標と同じか類似の商標
- 他人の業務に係る商品・役務
- 他人の周知商標を不正な目的で使用
- その他
それぞれ見ていきましょう。
他人の氏名、名称または著名な芸名、略称
他人とは、現実に存在する人や法人であり、外国人も含みます。
したがって、歴史上の人物などは含みません。
具体的には、国家元首、芸能人、スポーツ選手などの名前、通称、写真やイラストなどは、商標登録できません。
ただし、本人の了承を得ている場合は可能です。
他人の周知商標と同じか類似の商標
正確には、他人の周知商標と同じか類似の商標であって、かつ、商品・役務の分野が同じか類似する範囲で使用する商標について登録できないというものです。
周知商標とは、世の中に広く認識されている商標です。
たとえ商標登録されていなくても、すでによく知られている商標は登録できません。
この場合、一般の消費者は知らなくても、業界関係者ならよく知っている商標も該当します。
全国的な知名度はなくても、一部地方で広く認識されている商標も含みます。
他人の登録商標と同じか類似の商標
これも正確には、他人の登録商標と同じか類似の商標で、かつ、商標指定商品・役務と同じ、もしくは類似の場合に登録が認められないということです。
日本の商標法の考え方は、2つあります。
一商標一登録主義と先願主義です。
一つの商標に対して登録できる出願は一つであり、また、先に出願したものに権利があるという意味です。
他人の業務に係る商品・役務
通常、まったく同じ商標が先に登録してあっても、指定区分が異なれば商標登録可能です。
ただし、もともとの商標権者と経済的・組織的に何らかの関係があるような印象を与えると判断されると、登録されません。
経済的、組織的とはつまり、子会社やグループ会社などと混同される場合を想定しています。
どのような場合に混同すると判断されるかについては、以下の基準があります。
- 元の標章の周知度
- 創造標章であるかどうか
- ハウスマークであるかどうか
- 企業の経営実態として子会社やグループ会社がありそうか
- 商品どうしの関連性
他人の周知商標を不正な目的で使用
商標法や商標制度の仕組みを悪用し、あるいは、国際間の法律の隙間をで利用し、他者の商標権や自由な経済活動を侵害しようとする目的の商標登録を認めないための項目です。
次のようなケースが該当します。
- 外国で知られた商標が国内で登録されていないことを悪用し、商標を買い取らせる目的で先んじて出願する
- 外国で有名な店や製品の国内への参入を阻止、あるいは、なし崩し的に国内の代理店契約結ばせる目的で出願する
- 全国的に知られた商標の権威や信用、名声を貶め、あるいは、希少性を阻害する目的で商標登録する
その他
その他として上記に該当しない次の3つを規定しています。
- 他人の登録防護標章と同じ商標
- 種苗法で登録された品種と同じか類似の商標
- 真正な産地を表示しないぶどう酒又は蒸留酒の産地の表示を含む商標
登録防護標章とは、防護標章登録制度による特別な商標登録のことで、指定区分の枠に捉われることなく、著名な商標を第三者が勝手に使うことを禁止できる制度です。
種苗の新品種は種苗法に基づいて登録されることになっているため、改めて商標登録しなくても商標として守られるようにするための項目です。
ぶどう酒や蒸留酒については、産地がブランド化する商品特性があるため、産地と関係ない商品が勝手に産地ブランドを名乗ることを防止するための項目です。
以上、出願しても商標登録できないものとして、他に2通りあります。
それぞれ、以下の記事を参考にしてください。
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