海外で商標を守る方法としては、パリプロ活用による直接出願、EU出願、マドプロの活用の3つの方法があります。
3つの方法それぞれにメリットとデメリットがあります。
ここでは、EU出願について説明します。
EU出願とは
EU出願は、EU加盟国全域で統一された商標制度で、1996年4月1日にEU議会で採択されました。
一度の商標登録で全加盟国に有効な商標制度です。
この制度が採用される以前は、国ごとに出願を行っていましたので、費用も時間もかかっていました。
EU出願の誕生により、EU圏内における商標登録は極めて効率的になりました。
なお、もともとは共同体商標制度(Community Trade Mark=CTM)と呼ばれていましたが、2016年3月の改定によって、欧州連合商標制度(European Union trade mark=EUTM)に改称。
また、商標を扱うEU統一機関についても、域内調和庁(Office for Harmonization in the Internal Market=OHIM)から、欧州連合知的財産庁(European Union Intellectual Property Office=EUIPO)に改称しています。
EU出願の特徴
欧州連合知的財産庁に商標登録することにより、EU全体に効力が及びます。
2015年7月2現在でEU加盟国は28カ国が加盟しています。
たった1度の商標登録で、28カ国に直接商標登録したのと同じ効果があるわけで、ヨーロッパを対象にビジネスをするときには、極めて低コスト、効率的と言えるでしょう。
EU加盟国は減ったり増えたりしますが、新たに加盟国が増えたときには、手続や費用の追加はなく、新しく加盟した国へも自動的に効力が発効します。
商標登録するかどうかの審査は、実体審査と方式審査が行われます。
方式審査はいわゆる書類審査のことで、実体審査とは商標が標章として成立するかどうかの審査であり、類似商標の調査は行われないのが特徴です。
審査が完了するとEU域内に公告され、異議申立がなければ登録されます。
有効期間は、出願してから10年。
更新も欧州連合知的財産庁で行います。
EU出願のメリットとデメリット
EU出願のメリットは、以下の6つ。
- 1度の出願で、EUの全ての加盟国をカバーできる
- EU全域において同じ条件で商標権が守られる
- 更新など各種手続きも一か所で済むので登録後の管理も容易
- 一か所に登録するだけでよいので、出願・登録費用が安い
- 現地の代理人も一か所で済むのでコストが安く作業も簡単
- EU加盟国のうち1カ国でも使用実態があれば取り消されることはない
EU内の複数の国で商標を守りたいときには極めて有効な方法です。
一方、デメリットもあります。
- 商標登録が失敗した際にもEU全域に効力が及ぶ
- 無効・取消もEU全域におよぶため、いったん取消・無効になるとEU全域で商標権が消滅する
- 審査時に、類似の先行商標がないかの審査は行なわれず、異議申し立てを受け付ける形式のため、実体的には、域内で類似・同一の商標が共存することになる
EU出願での商標登録に失敗しても、各国個別に直接出願する方法などが残されていますが、極めて煩雑な手続きと高いコストがかかります。
海外で商標登録する方法はEU出願の他に下記の二つがあります。
あわせて参考にしてください。
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