ご質問
フリー素材のイラストや画像などを利用してお店の看板やオリジナルの包装紙を製作しました。
それなりに店の顔として認識されるようになってきたので商標登録出来ないかと考え初めています。
しかし、そもそもフリー素材をもとに作ったデザインです。
商標登録可能でしょうか。
回答
フリー素材でも利用制限しているケースがある
このケースは非常に複雑で一言では表せませんので順を追って説明していきましょう。
まず、このケースでは、商標登録できるかどうか、という前に著作権の侵害についての懸念があることに注意しましょう。
そもそも、商用利用OKのフリー素材だからといって完全に著作権を手放しているとは限らないケースがあるようです。
利用制限の範囲内で使用している限りにおいて著作権を行使しないというだけで、その範囲を逸脱すれば著作権の侵害に当たる場合があります。
たとえば、特定の思想(宗教や政治)の啓もうのための使用やアダルト(風俗、出会い系など、婚活パーティ)などの広告への使用禁止などの制限を設けているケースが一般的です。
その他、個人利用は可でも企業や団体の利用を禁止しているケース、二次使用や加工に制限をかけているケースなどがあります。
必ず利用規約を確認し看板や包装紙のデザインに使用することそのものが、利用制限の違反に当たらないかどうかをまず確認すべきです。
その上で、著作権上の問題がないということがはっきりしてから、商標登録について考えるという段取りになるでしょう。
フリー素材が一般的なものとして浸透している場合は商標登録できない
利用制限がなければロゴや包装紙のデザインとして使用できるわけですが、ここで質問の趣旨に戻ると、フリー素材を使ったデザイン物を商標登録できるかどうかです。
この場合、当該のフリー素材が一般的にどれだけ知れ渡っているかどうかが問題です。
すでに、一般的にかなり浸透している素材だとすると、すでにいろいろなデザインに使用されていることになります。
したがって、他所で使われているデザインとの識別力を失うことになるので、商標登録できません。
そのフリー素材を使ってすでにロゴや包装紙を作っている第三者からすれば、商標登録されると自分のところのデザインが使えなくなりますので、登録に意義を申し立てることになるでしょう。
二次創作物としてなら商標登録できる可能性がある
フリー素材が一般的に広まっている場合、商標登録できない可能性が高くなりますが、デザインの一部として使った場合や加工を施して二次創作の要素を加えた場合はどうでしょうか。
商標法から言うと、デザインの一部を使用したり、加工をほどこしたりしたうえで、オリジナル性の高いデザインに二次創作すれば商標登録できる可能性が高まります。
たとえば2020年東京オリンピックのエンブレムに採用されデザインは市松模様をモチーフにしたものでした。
市松模様や千鳥格子など伝統的なデザイン要素に著作権は存在しませんが、それらをモチーフにして生まれたオリジナル性の高いデザインは新たな創作物と言えるし、当然、商標登録することも可能です。
この場合、同じ素材を使った別の商標やデザイン物と混同を生じるかどうかが重要な判断基準になります。
ただし、商標法とは別な問題として、もともとの著作者が二次創作や加工を認めていない可能性があります。
あるいは、加工は認めていても、二次創作・加工したものに対しても著作者の著作権を有することを条件に、素材としての使用を認めているケースもありますので、いずれにしても利用規約をよく確認しましょう。