世界的なロックグループ、キッスのギタリストであるジーン・シモンズさんが、商標登録を目指して米当局に行っていた「デビルズホーン」の申請を放棄した模様です。
デビルズホーンは、シモンズさんがステージ上などのパフォーマンスの際、好んで使っていた手のジェスチャーでしたが、同様のジェスチャーを使っているアーティストは他にもおり、ロック界で一般的に使われているため、商標として独占しようとすることを疑問視する声が上がっていました。
デビルズホーンは誰のもの
シモンズさんが「デビルズホーン」の商標登録を試み、米当局に出願の申請を行ったのは6月9日です。
翌10日にマスコミなどで取り上げられると、ロック界からさっそく疑問の声が上がりました。
他のアーティストやファンの間でも、広く一般に使われているハンドサインの一種だったからです。
中でも、あからさまな「不快」を示したのは、同じアメリカのロックスター、故ロニー・ジェイムス・ディオさん夫人です。
「デビルズホーン」は、ディオさんがトレードマークとして使っていたジェスチャーでもあることで知られています。
シモンズさんの手の形は親指を立てているのに対して、ディオさんは親指をたたむなど、若干の違いはあるものの、ともに、イタリアなどで古くから伝わるハンドサイン「メロイック・サイン」を原型にしたものだと言われています。
生前のディオさんは、「メロイック・サイン」について、「流行らせたのは自分だが、誰かが先に使っていた」という認識を示していました。
こうしたことから、ディオ婦人は、「サインはみんなのもので誰かに独占させるべきではない」という趣旨の批判を展開していたものです。
申請から11日間の素早い決断
結局、こうした批判の声に押されたのか、シモンズさんは米当局に申請していた商標出願を断念する決断を下したようです。
米当局のサイトでは、6月20日付でシモンズさんの申請が放棄されていたことが確認されています。
申請からわずか11日間の素早い決断でした。
シモンズさんと言えば、音楽活動の傍ら、自分たちのフェイスペイントの造形やバンド名、ステージネームなどを商標登録し、ライセンスビジネスを展開してきた先駆けです。
アメリカ国内のマスコミの分析によると、ライセンスビジネスのみの収入だけで、これまで10億ドル(日本円で1000億円以上)を稼いだと言われています。
それだけ、このビジネスに詳しかったシモンズさんも、今回ばかりは勇み足だったのかもしれません。
シモンズさんが商標登録を目指していたハンドサイン「デビルズホーン」