大正製薬から発売されているリポビタンDは、50年以上たった今でも年間386億円を売り上げている商品です。
今回はロングセラー商品、リポビタンDのネーミングのお話です。
名前は2つの言葉と1つの文字の造語
リポビタンDの原型として「リポビタン」と言う商品があり、錠剤とアンプル剤の2種類がありました。
リポビタンの名前は2つの言葉から成り立っています。
「リポ」は「リポクラシス(脂肪分解)」から、「ビタン」は「ビタミン」からとりました。
では、リポビタンDの語尾についている「D」の意味は何なのでしょうか。
「D」の意味にはいくつかの見解が存在しているため、ただ1つの正解があるわけではありません。
有力な説が社史にあります。
先行商品「タウローゼC」また、「オロナミンC」に続くものと言う記号的な意味で「D」と付けたとあります。
もう1つの有力な説に、公式の見解として「デリシャスなどを意味する」と言うものがあります。
「美味しさ」の、英語の名詞「デリシャス」は、「リポビタン」が「リポビタンD」に生まれ変わるための重要な鍵なのです。
リポビタンD誕生の鍵
高度成長期、懸命に働く人々の滋養強壮のニーズにリポビタンが応えていました。
主成分であるタウリンはアミノ酸の一種で、人間の体の約0.1%を占めていて、エネルギー生産に関与しています。
しかし、リポビタンのアンプル剤には有効成分独特の苦みがありました。
そこで当時の社長、上原正吉氏はアンプル剤の容量を増やすことをひらめきます。
20mlから100mlに増量することで、有効成分の独特な味を薄めることができたのです。
さらにパイナップルのフレーバーを加えることで、いっそう飲みやすく美味しくすることに成功しました。
こうして「デリシャス(美味しさ)」に着目することで、リポビタンDが生まれたのです。
「ファイト・一発!」ではない時代
リポビタンDの現在のCMは「ファイト・一発!」のかけ声でおなじみです。このキャッチフレーズは、最初は違うものが使われていました。
商品発売の翌年の1963年から、プロ野球のスター選手だった王貞治氏がCMに起用されました。
当時のキャッチフレーズは「ファイトで行こう! リポビタンD」でした。
王貞治氏のCM出演は10年間にわたりました。
1973年からは大物俳優を起用し、キャッチフレーズは「ヨッ! お疲れ!」でした。
のちに「お疲れさん!」「やるじゃない!」と移り変わっていきます。
1977年から、2人のタレントが力強さをアピールするCMで使われる「ファイト・一発!」の時代となります。
それまでのフレーズと比べても、30年以上という長い間使われ続けています。
現在では「ファイトーイッパーツ!」のセリフも音商標として商標登録されています。
参考:大正製薬