コカ・コーラは世界中でもっとも知名度の高い清涼飲料水と言えるでしょう。
その歴史は1886年アメリカにさかのぼります。
アトランタの薬局ジェイコブスファーマシーで販売されたのが始まりと言われています。
世界中に広まることになるコカ・コーラ、ネーミングの元になったのはあの薬剤でした。
最初は薬の一種だった
そもそも19世紀末のアメリカでは、炭酸水は薬の一種として扱われていました。
軍人で薬剤師でもあったジョン・ペンバートンが、当時蔓延していた中毒症状の治療薬として、ワインにコカインとコーラエキスを注入したフレンチ・ワイン・コカを発明したのが最初です。
1885年の禁酒法施行にともない、ワインの代用として炭酸水を使用することになり、これが後のコカ・コーラの直接の原点になりました。
コカ・コーラに目を付けたのは、ジェイコブスファーマシーの一角でソーダファウンテンを運営していたウィリス・ベナブルです。
「ソーダファウンテン」とは、カウンター形式の喫茶店のことです。
当時のアメリカの薬局は薬も売っていますが、雑貨店やカフェを併設したちょっとした商業施設だったのです。
ベナブルはペンバートンから権利の一部を買い取り、ソーダファウンテンでコカ・コーラの販売を開始しました。
その後、家を買う資金が必要になったペンバートンは、コカ・コーラの販売権をジェイコブスファーマシーの経営者であるジョゼフ・ジェイコブス博士に売却します。
ジェイコブス博士は薬学者であると同時に優れた経営者でもありましたが、コカ・コーラの扱いに困り、薬剤師仲間であり後のザ・コーラ・カンパニーの創業者であるエイサ・キャンドラーに譲ることにしたのです。
所有者が二転三転したコカ・コーラでしたがキャンドラーの手に渡って以降、一躍ヒット商品となっていくのです。
コカ・コーラのネーミングの由来
ところで、コカ・コーラのネーミングです。
命名したのは、開発者のペンバートンでもなければ、最初に販売したベナブルでもなく、ジェイコブスでもありませんでした。
ペンバートンの下で働いていた経理マンのフランク・ロビンソンという人です。
ロビンソンの発案で、当時、原料として使っていたコカインとコーラナッツをかけあわせたのです。
コカインは向精神薬の一種で常用すると中毒症状を呈するため現在では医師の指示なしに使用することはできませんが、当時は薬局でも普通に扱っていたのです。
ちなみに、現在のコカ・コーラにはコカインは使われていません。
一方のコーラはアフリカの熱帯雨林に生息するコラノキ属の植物で、栗ほどの大きさのナッツから採集されるエキスには興奮剤効果も含まれていました。
ただし、コーラのつづりはkolaですが、コカ・コーラは英語だとcoca-colaになります。
コーラの頭文字kをCに変えたのは、韻を踏むためでした。
命名者であるロビンソンの、大文字のCが2つ並んだほうが広告の中でよく映えるというアイデアによるものです。
果たして、当時流行していたスペンサリアン体という流れるような書体で書かれたcoca-colaの文字はよく映え、狙い通りヒット商品になったのです。
1886年以来使用してきたcoca-colaの商標を3年後の1893年、アメリカの特許局に商標登録。
1916年には当時7000種類もの類似品が出廻っており、他社の物と区別するためにボトルの特許も取得しました。
1923年には商標を守るためにコカ・コーラ法律手引書を作成、1945年には愛称であるコークの商標登録も実現しています。
今日、コカ・コーラ社の製品の消費量は一日18億杯、進出している国は200か国以上に上ります。
コカ・コーラが販売されていないのは地球上でキューバと北朝鮮のみという状況です。
2015年にアメリカとキューバの国交が回復したのでいずれキューバでもコカ・コーラが販売される日も近いでしょう。
すると、コカ・コーラの味を知らないのは世界で北朝鮮国民だけということになりそうです。