商標の権利である商標権とよく似たものに著作権があります。
いずれも創造物に対して得られる権利であり、それぞれ商標法、著作権法という法律で守られています。
似ているようでもまったく別の2つの権利ですが、具体的にどう違うのでしょう。
権利の特徴
商標は、企業や商品・サービスの名称、ロゴマーク、あるいは、企業やブランドを想起させる音楽、色彩など企業や個人が行う商業活動における権利を主に保護するものです。
これに対して著作権は、絵画、音楽、文章など、独創的な創作物の権利を保護するもので、いわゆる文化、芸術作品を主に対象としています。
一概に、商標=商業的、著作権=文化的、というわけではありません。
著作権には著作者人格権と著作者財産権の2通りがあり、人格権は著作者の所有権を保護し、財産権は作品を営利目的に使用する際に発生する権利を言います。
また、商標として登録したマーク、キャラクターに独創性のある創作物であると判断されると、著作権が発生することがあります。
もう一つの大きな違いとしては、商標権は他人に譲渡・貸与できますが、著作権はできません。
著作権で認められている著作者の権利は、著作物を使って収益を上げることの許可を与えることのみです。
権利の発生
商標は、特許庁に登録することによって、初めて商標権が発生します。
商標として登録していない場合でも、長期間の使用によって世間的に広く認知されているなどの顕著性が認められると商標の実質的な使用権(先使用権といいます)があると判断される場合もあります。
しかし、基本的には、商標として先に出願し、登録した人に商標権が与えられます。(出願主義と言います)
これに対して、著作権は、著作物が誕生した瞬間に発生します。
商標を登録するときのように、どこかの機関に登録する必要もないので、官公庁に出願するような手間も不要です。
効力の違い
商標は、出願時に登録した区分の範囲、および類似範囲に限り、独占的な使用権が主張できます。
たとえば、自分が考えたキャラクターの造形を皮革製カバンのデザイン用として登録した場合は、各種カバンとその類似範囲である小物などの商標として商標権が守られ、第三者が勝手に使うことはできません。
半面、登録した範囲外の使用目的については、権利が主張できないのです。
その点、著作物には範囲の制限はありません。
したがって、どのような用途であろうと、著作物を勝手に登用すれば、著作権の侵害を主張できます。
ただし、著作物の存在を知らず、偶然に似たような作品ができてしまった場合、著作権の侵害には当たりません。
当然ながら、合理的に考えて、真似たのでなければ説明できない顕著な類似性が見られる場合はこの限りではありません。
また、著作物を私的に利用するための複製、模倣については、権利の侵害に当たりません。
たとえば、ある漫画のキャラクターのファンで、自分の持ち物にキャラクターの絵を描いて持ち歩いていても、著作権の侵害とは言えないのです。
一方の商標については、故意・過失にかかわらず、登録したものと同じ商標、類似している商標を第三者が使用した場合、先に登録した人が使用を制限できます。
仮に、先に登録されていた商標の存在を本当に知らなかったとしても、「偶然に似てしまった」という言い訳は通用しません。
特許庁に登録されている商標は、誰でも簡単に検索、閲覧できます。
商標を使用する前に、他の誰かが同じ商標をすでに登録していないか調べることはできたはずなので、「知らなかった」ではすまないのです。
また、私的な利用であるかどうかは問題にされません。
たとえば、アニメのキャラクターを自家用車の車体にペイントして楽しむ痛車と呼ばれるジャンルがあります。
著作者が使用を事実上、黙認しているだけで、厳密には著作権の侵害に当たります。
権利の存続する期限
商標の権利が存続する期間は、登録から10年です。
ただし、商標権については存続期間の更新が可能です。
最初の10年が過ぎたら、更新手続きを行うとさらに10年延長されます。
更新回数の決まりはないので、実質、半永久的に商標の権利が守られます。
著作については、権利の存続する期間に制限があります。
現在の法律では、著作者の死亡から50年で権利が自動的に消滅するルールになっています。