放送中のNHK大河ドラマ「おんな城主直虎」で注目が高まっている戦国城主「井伊直虎」の商標を巡り、静岡県浜松市商工会議所などが申し立てていた「直虎」の商標に対する異議が特許庁によって却下されていたことが報道などで分かりました。
この問題を巡っては、同じ「直虎」の名を持つ歴史上の人物の輩出地である浜松市と、長野県須坂市の間で、商標登録の是非について意見が対立するなど問題が複雑化しています。
直虎をめぐる商標問題の経緯
静岡県浜松市は井伊直虎が活躍した由来の地で、市や商工会議所は、番組の放送開始にともない、観光産業や特産品を全国にアピールするチャンスと見て、「直虎」を前面に出したキャンペーンを模索していました。
ところが、調査すると、すでに複数の事業者によって「直虎」が商標登録されていることがわかったのです。
商標登録(出願中含む)していたのは、長野県須坂市の酒造会社、味噌醸造会社、浜松市のデザイン会社などです。
浜松商工会議所は、歴史上の著名な人物である「直虎」の商標が、一企業に独占されるのはおかしいと訴え、事業者らが行った「直虎」の商標登録に異議申し立てを行っていたものです。
著名商標とまでは言えないと判断
問題の経緯は、この連載でも過去に取り上げているので詳細は下記を参照にしてください。
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ポイントになっていたのは、浜松市商工会議所が主張する、『NHKの放送が行われている現在、「直虎」は歴史上の著名人物として全国的に認識されている』とする主張を特許庁がどう判断するかでした。
歴史上の著名な人物は、たとえフルネームでなくても、商標登録するのにふさわしくない「著名商標」と位置付けるのが特許庁の基本的な姿勢です。
ドラマは1年近くにわたって毎週放送され、視聴率は高く、関連番組も含めて露出の機会は多いので、確かに知名度は急上昇していると考えられます。
とはいえ、つい半年前までは、知る人ぞ知るマニアックな存在だったのも確かです。
NHKの大河ドラマの波及効果は大きいとはいえ、観ていないし、関心もない人のほうが相対的に多いのが実際のところでしょう。
「NHK大河ドラマで放送されているから有名」という根拠は通りにくいのではないかと考えられていました。
そんな中で下された、今回の特許庁による異議申し立て却下の査定は、「直虎」という名前だけでは「井伊直虎」と特定することはできず、そこまで著名でもないと判断したものと思われます。
今後は争わず互いの直虎にエール
商標登録の異議申し立ては通らなかった浜松商工会議所では、さらに法的な手段をとることは検討していないようです。
主張は主張として発信したものの、これ以上争うよりも、せっかく注目度が高まっている機会を有効利用する方向性を模索する。
さっそく、4月4日、商標を巡って意見が対立した須坂市商工会議所と連携をとり、お互いの由来の人物「直虎」をアピールしていくことで合意しました。