経産省が推進し、月末の金曜日は定時より早めの退社を促す運動、「プレミアムフライデー(PREMIUM FRIDAY)」がスタートした2月24日、思わぬところからこの制度が注目を集めました。
経済産業省は、「プレミアムフライデー」を商標登録出願していますが、例によって、他人の商標を勝手に大量出願しているあの会社とかち合ってしまったのです。
それも、商標出願日が同日という、業界でも珍しいハプニングというおまけつき。
ロケットニュース24 【悲報】『プレミアムフライデー』の商標が「ベストライセンス株式会社」に出願される
いったい、商標の行方はどうなるのでしょうか。
ベストライセンス社も同日に出願
経済産業省はプレミアムフライデーの構想を発表した2016年8月13日づけで、特許庁に商標出願していました。
ところが、まったく同日に商標登録出願している会社があったのです。
その会社とは大阪のベストライセンスという会社です。
ベストライセンスとその代表を務める上田育弘氏は、他人の商標を勝手に大量出願している業界の有名人で、同様の問題で度々登場しているので最近では一般の知名度も上がってきたようです。
ともかく、商標登録情報を調べてみると以下の通りです。
1)
出願番号:2016-088273
商標:PREMIUM FRIDAY
出願人:ベストライセンス株式会社
出願日:2016年8月13日
状態:係属 / 存続-出願-審査待ち
2)
出願番号:2016-088421
商標:PREMIUM FRIDAY
出願人:経済産業大臣
出願日:2016年8月13日
状態:係属 / 存続-出願-審査待ち
出願日が同日の場合の扱い
同じ商標が、同日に商標登録出願されることは、年間約10万件の商標登録出願を受け付ける特許庁でも珍しい現象だと言えます。
それはさておき、商標登録出願が同日になると、どのように扱われるのでしょうか。
日本の商標法では、出願主義といって、先に商標登録出願した人に、商標登録の優先権があります。
商標登録出願は1日24時間受け付けていますが、時間は関係なく、判定されるのは日付のみです。
したがって、同日の場合は双方に優先権があります。
が、商標登録できるのはどちらか片方だけですので、特許庁は、どちらの商標を登録するか決めなければなりません。
決めるまでに、いくつか段階があります。
第一段階
まず、そもそも商標登録できる出願かどうかが問題です。
例によって、ベストライセンス社は、出願手数料を支払っていないようですので、そのまま支払わないでいれば自動的に商標登録出願は却下されます。
仮に、出願手数料を支払ったとしても、他人の商標を第三者が勝手に出願することは商標法の趣旨に反しており、同社の商標登録出願は不正出願とみなされ、登録できない可能性が高いと言えます。
したがって、放っておけば、経済産業省の商標登録出願が認められることになるでしょう。
第二段階
仮に、双方の商標登録が可能だと判断された場合、次の段階に進み、特許庁が出願人双方に対して協議命令を出します。
つまり、どちらが商標登録するか、当事者同士が話し合いで決めなさいということです。
最終段階
話し合いで決着がつかない場合、第三段階(最終段階)に進みます。
その決定方法とは、なんと「くじ」です。
商店街の福引で使われるような、ガラガラ回すと色違いの玉が一個だけコロンとでる、あの道具を使います。
特許庁の一室で、出願人双方が出席し、特許庁職員によってくじびき作業が行われます。
くじですから、可能性は両社平等。
運命はすべて出る玉に託されます。
つまり、仮に、この段階まで進んでしまえば、今後、経済産業省は、「プレミアムフライデー」の商標を使えなくなるか、使う場合は、ベストライセンス社に莫大な使用料を支払うことになります。
発表前に出願しておかなかった経産省の怠慢
よもや、ベストライセンス社の商標登録が認められるとは考えられませんが、もしそんな事態になったら、経済産業の大失態です。
そもそも、発表したその日に商標登録出願したのが大きな誤りです。
同社の代表である上田育弘氏は、テレビや新聞、ネットなどで見かけた商標をかたっぱしから出願しているのであり、発表前なら彼には出願しえなかったのです。
世の中に出してしまったあとでは、誰かが先に商標登録出願してしまうかもしれません。
どうせ出願するなら、なぜ発表前にしなかったのでしょうか。
上田氏にしてやられたというより、経済産業省の怠慢というほかはありません。
いうまでもなく、商標を始めとする知財法を管轄する特許庁は経済産業省の外局です。
商標登録などしたことない、商標法にも縁がない素人とはわけが違います。
もうちょっとしっかりしてもらわねば困ります。
「プレミアムフライデー」については、実施率は低く、実効性に疑問符つき、そもそも経済効果も怪しいなど、前評判はよくないうえ、初手からもうすでにケチがついた格好です。