出版不況と言われる中、本屋さんの力で出版を盛り上げようとして始まった本屋大賞ですが、そのロゴと名称を勝手に使用するケースが報告されました。
賞を運営するNPO法人本屋大賞実行委員会では、名称とロゴを勝手に使うことは商標法違反に当たるとして注意を呼び掛けています。
非権威でスタートした賞がいまでは権威に
本屋大賞は全国書店員が選んだいちばん! 売りたい本をキャッチフレーズに2004年にスタートした文学賞の一つ。
キャッチコピーの通り、書店員の投票で受賞作品が決まります。
出版社の思惑や販売部数などによって受賞作が偏りがちになっていると指摘される権威的な文学賞に対して、そのような予断が入らない純粋な本好きが選ぶ賞としてスタートしました。
2016年まで毎年大賞が開催され、歴代の受賞作がベストセラーになったり、ドラマ化・映画化されるケースが続くなど、現在ではすっかり定着している感があります。
評価が上がれば上がるほど、いまでは本屋大賞そのものが権威になり、すると、その威光にさずかろうとする者が出るのが世のならいのようです。
ノミネートされていないのに勝手に宣伝
本屋大賞を受賞したりノミネートされたりした作品には、特典として、本屋大賞受賞、本屋大賞ノミネートといった文言や、大賞の登録商標である王冠のロゴを本のデザインや店内のPOPなどで使用できます。
本屋大賞は書店が主体になった賞ですから、受賞作品は本屋さんでも積極的に売ってくれますので、出版社側でも宣伝に使いたいのは当然です。
ところが、ノミネートされていないにもかかわらず、勝手に本屋大賞ノミネートといった文言や王冠のロゴを帯に印刷している本があるという報告が実行委員会に届いたということです。
実行委員会の関係者は、本屋大賞の名称及びロゴ商標は商標登録しており、無断で許可なく使用すると商標侵害に当たるとして警告しています。
本屋大賞のロゴは2004年11月に博報堂と本の雑誌社の連名で商標登録されており、立派な登録商標です。許可なく勝手に使えば、商標法違反が成立します。
とはいえ、いろいろ疑問も残ります。
問題の本の現物は発見されなかったそうですが、何と言う書名の本か、出版社はどこか、置かれていた本屋はどこだったのか不明のままです。
どこかの本屋さんの店頭に置いてあったことから、無断使用が発覚したはずですが、賞の運営にはかかわっていない本屋さんでもノミネート作品ぐらいは知っていて当然とも思えます。
気づかずに置いてしまったのでしょうか。
どうも不自然ですが、実行委員会でもそれ以上のことは発表していないので真相はやぶの中です。