イギリスが欧州連合から離脱するかどうかを問う国民投票が6月23日に予定されている中で、トヨタ自動車と日産が離脱派の一部を商標法違反で提訴する動きを見せています。
イギリスの社会変革と日本の自動車メーカーに接点があるようにはちょっと思えません。
いったい何が起こっているのでしょうか。
英のEU離脱を問う国民投票とは
発端となっているイギリスの国民投票の経緯をざっとおさらいしておきましょう。
イギリスはもともと欧州連合の加盟に慎重な姿勢をとってきた歴史があり、加盟済みの現在も共通通貨は使わないなど一定の距離をとっています。
ドイツが主導権を握るEUの運営方式に対する反発があり、これに移民問題など複雑な問題がからんで国内世論を二分していたのです。
EU離脱の世論が高まりを見せる中で、2013年に就任したキャメロン首相はイギリスとEUとの関係構築について一定の結果を出した上で、EUを離脱するかどうかの国民投票を行うことを国民に約束しました。
2016年になり、イギリスが提案したEUの改革案について欧州連合会議で合意したことを受け、キャメロン首相は約束通りEU加盟の是非を問う国民投票を行うことを決めたのです。
さて、以上の経緯に対して、日本の自動車メーカーがなぜかかわってくるのでしょうか。
日本メーカーの信頼が運動に使われた
問題となったのは離脱を求める超党派組織Vote Leave(ヴォウト・リーヴ=離脱に投票を)。
6月9日、この団体に会社のロゴ商標を勝手に使われ商標を侵害されたとして、トヨタ自動車が提訴を検討していることを明かしました。
トヨタ自動車によると団体はトヨタのロゴ商標をビラやプラカードに無断で印刷して運動の宣伝に使い、あたかも会社が運動を支持しているかのような誤解を与えたということです。
すると翌日、日産自動車も同じ問題でヴォウト・リーヴを商標法違反で提訴の検討に入っていることがわかったのです。
EUからの離脱はイギリス経済によってマイナスの影響が大きいとされ、経済界は基本的に残留賛成の立場。
これに対して離脱派は、多くの企業が離脱に賛成しているかのような事実と異なるプロパガンタを展開しており、欧州でのブランドイメージが高いトヨタや日産が宣伝に使われた格好です。
商標は基本的にビジネスの場面で活用されるものですが、ブランド価値が向上するとこのように社会運動の面で使われることもあるということです。