商標登録をためらう理由として、「商標登録してもお金にならない」という意見があります。
確かに、目に見える利益があがりにくいことはあります。
しかし、商標の侵害を防ぐことで売り損ないをなくしたり、あるいは、ブランド形成を図ることで販売促進につなげるなど、ビジネスに有益な効果があるのは言うまでもありません。
さらに、めったにないことではありますが、商標登録することよって直接的な利益を上げることも決して不可能ではないのです。
iPhoneと商標が被ったアイホン
商標登録によって、直接的な利益を上げることになった例として、最近ではアイホンのケースがあります。
インターホンなどを製造する国内のトップメーカーですが、この社名、何かに似ていませんか。
そうです。アップルコンピュータのスマートフォン「iPhone」とそっくりです。
もちろん、たまたま似てしまったものです。
アイホンの商標の由来は、主力商品のインターホンの製品名として、真心を込めるという意味でつけた「愛」と、電話の「Phone」をあわせて作ったもの。
1954年から商品名として使い、1959年には社名としても使っています。
アップル社のiPhoneが登場する50年も前のこと。
当然、アメリカの会社であるアップル社は、アイホンの存在を知りません。
iPhoneが誕生して日本でも販売する段になって、アイホンと商標が被っていることがわかりました。
年間1億円のライセンス料が転がり込んだ
そこで、アイホンと協議の上、「iPhone」をカタカナ読みするときには、「アイフォーン」と表記することで商標の侵害はないことで合意しました。
困ったのは英語の「iPhone」です。
すでに、2006年、アイホン側が商標の英語読みの表記として、「iPhone」を商標登録していたのです。
アップルの「iPhone」が誕生する1年前のことです。
アップルとしても「iPhone」の商標で世界的に売り出してしまっていますのでいまさら変えられません。
かといって商標としてはまったく一緒。「iPhone」が発売する50年前から商標を使っているアイホン側には商標の先取りの意図はなく、まったくの不可抗力。
アップル側に勝ち目がないことは明白。
そこで、日本国内でiPhoneの商標を使うに際して、アイホン側にライセンス料を支払うことで合意したのです。
ライセンス料の相場は通常、年間数十万円から数百万円ですが、なにせ世界中で売れに売れまくっているiPhoneです。
そのライセンス料は莫大で、新聞記事などによると年間1億円に達するのではないか、ということです。
一般的に、商標を第三者に貸し出すのは管理が難しく、センスビジネスを専門とする企業以外では手をだすべきではないと言われることもあります。
しかし、アイホンのケースのように、大きな利益を生み出すことも稀にあるということです。